重要なのは、フラットかつオープンに個人の意欲を支援すること

 一人ひとりが今の役割に集中し、能動的に行動し、最大限の力を出す。そんな環境を目指し、中野さんが投入したとっておきの施策となるのが7つ目の「CEO改善提案」だ。

中野「もっとこうしたら、この会社は良くなるのにな」「こんな新しいことを始めたら、お客様は喜んでくれるんじゃないか」、そんなアイディアがあれば、誰でもダイレクトに提案できる制度です。

 社内のコミュニケーションツールに専門のチャンネルを設けて、宛先はCEOの僕にしました。つまり、上司を飛び越えてトップに提案できる。提案するだけで500円、実現したら1万円、継続施策となったら10万円と、インセンティブも付けています。開設した初日からたくさんの改善提案が届いて驚きました。パートの女性からもいいアイディアがきましたよ。今でも週に5通は届きます。

 これをやりたかった理由は、硬直化した縦型組織の中でいいアイディアが埋没してしまう問題を解消したかったからです。現場の社員がせっかくアイディアを練っても、直属の上司が通さなかったばかりにトップに届かずお蔵入りになることは、日本中で起きていることではないでしょうか。でも実はその中に宝のアイディアが隠れていたりする。

 僕は大学まで野球をやっていたのですが、チームメンバーの大半を4年生が占めるようなチームは勝ち続けられません。年功序列型で、本当は能力がある下級生が野球以外の雑務に追われて、本来やるべき練習に集中できていない証拠ですから。学年関係なく切磋琢磨し、実力のある選手が試合に出るチームのほうが強くなるに決まっていますよね。

 会社だって同じです。上や下や横に、忖度せずに、より良い仕事をするために集中できる。そんな姿勢を後押しするために、この取り組みを始めました。

 これら7つの施策に一貫しているのは、フラットかつオープンに個人の意欲を支援し、モチベーションを高めること。「去る者追わず」の中野さんのメッセージは決して甘くはないが、個々の人が持つポテンシャルに対する信頼が根底にはある。

中野 日本社会全体も企業も流動性を高めていかなければ、この先生き残ることはできないでしょう。そして働く個人も、自分自身にプレッシャーをかけて、緊張感を持って働かないといけませんよね。流動的な環境の中で、タフにしなやかに、仕事を楽しめる自分になれるかどうか。

 そんな人が増えていったら、日本はもっと元気になります。ACAOもその準備をしています。僕はCEO就任から2年たつ頃には、必ず借金を返せる自信があります。そしてその頃には、空高く飛躍できるチームが育っているでしょう。ぜひ期待して見ていてください。