新宿・歌舞伎町での傷害致死事件などで注目を集めた「トー横キッズ」の存在も、根幹には“孤独感”があったという。

「精神的・肉体的虐待や貧困などにより、家庭が安全な場所ではなくなった子どもたちが、それ以外の居場所を見つけられず、消去法で歌舞伎町に集まったのだと思います。彼らにとって、歌舞伎町は唯一救われる場所だったんです。ほかにも、コロナ禍の孤独感から夜の街に出て、暴力団と関わるようになったり、風俗で働くようになった若者もいます」

 これまで社会から避けられている場所が、孤独な若者のセーフティーネットとして機能している側面があるという。

若者には家庭以外にも
複数の居場所が必要

 コロナ禍で若者の孤独が深刻化する背景には、家庭以外に逃げ場がないという問題もある。

「何でも話せるような人とのつながりを、本来なら小さい頃からたくさんつくっておく必要があったと思います。家庭は居場所として機能すべきところですが、『家庭だけが居場所』という固定観念が強すぎて、息苦しくなることもあります。そうならないために、学校や地域のコミュニティなど、家庭で疎外感を抱いたときに逃げられる“別の居場所”をつくっておくべきだったのではないでしょうか」

 家族とうまくいかないなら、先生、スクールカウンセラー、友達、ほかのコミュニティに頼るといった、1つの居場所に依存しない社会との接し方が必要なのだ。

「孤独感を緩和してくれる人かどうかは、相性もありますので、人によって異なります。それゆえに社会との接点は複数あるとよいでしょう。また、本人が望むように話を聞いてもらえる環境、相談場所を準備することも大切です。『若者にはSNSがある』という人もいますが、SNSが普及した今も社会的なつながりの不足が叫ばれています。つまり、コミュニケーションの量より、質に着目すべきなのだと考えます」

孤独を感じることは
特別なことではない

 以前にも増して孤独感が強まっている今、どんな対応が必要になるのか。

「まず、『孤独を感じることは恥ずかしいことではない』という文化を定着させる必要があります。ひと昔前は、『孤独が人を強くする』という思想が強かったかもしれません。しかし、孤独感とは『おなかが空く』『喉が渇く』と同じく、誰でも当たり前に感じることであり、決して若者だけが甘ったれているわけじゃないんです」