なお、同書によると例えば「司法書士 後見 横領」とインターネットで検索するだけで多くのケースが出てくるという。確かにその通りだ。

 ちなみに、弁護士、司法書士等の職業後見人は、不動産を売却した場合に事務の報酬が別途支払われるし、裁判所が決める後見人・監督人の報酬は被後見人の銀行預金残高に応じて決められる仕組みだ。従って、後見人が不動産を売却したり、保険の解約や有価証券を売却したりするなど、預金残高が増える状態を好むインセンティブが働く仕組みになっている。さらに、職業後見人が生活費を家族に出し渋る原因にもなっていると考えられる。

 経済取引の常識で考えると、何とも不細工で理不尽な仕組みなのだ。

 同書には高齢者の認知症のケースも多数載っているし、障害がある子どもとその親の身につまされるケースも複数取り上げられている。

 ともかく、後見人の選任を申し立てようかと思う人は「手続きをする前に」一読してほしい。手続きを始めてしまうと手遅れになる場合がある。後見が必要か否かの判断方法、トラブルの際の対処方法や連絡先なども載っている。

後見制度のリスクを避けるには
どうしたらいいか?

 では、まだ成年後見制度を利用していない「普通の人」はどうしたらいいのか。

 宮内氏が、前掲書の後書きで述べる「結論」は以下の2点だ。

(1)今の法定後見制度には慎重に臨む
(2)実際に使うためでなく、法定後見から身を護る楯として心当たりの人と任意後見契約を締結しておく

 何はともあれ、「職業後見人を付けられかねない法定後見を避けよ」ということだ。そのために、後見が必要な場合にあらかじめ指定した人物が後見人になることができる任意後見契約を締結しておくといいが、任意後見契約もできるだけ発効しない方がいいということなのだ。「後見」とは、一体誰のためにある制度なのだろうか。

 任意後見契約で、親族などが後見人となる場合にも、この後見人が適切に後見しているかどうかをチェックする「監督人」という、いささかお節介で余計な役割がある。弁護士・司法書士などが選任され、監督人に報酬が発生するのだ。

 親族の後見人が被後見人の財産を使い込むようなケースがあり得なくはないのだが、家族にとっては監督人が不要と感じられる場合が多いはずだ。