なお「黄金の90分」は就寝時間とはさほど関係ない。何時に寝ても、最初の眠りが「黄金の90分」だ。「日付が変わる前に寝ないと黄金の90分にならない」「午後10時から午前2時までがお肌のシンデレラタイム」は誤りである。

 仕事や育児、介護などで忙しい人や、シフト制で働く人にとって、日付が変わる前に寝たり、理想の睡眠時間を確保したりするのは難しいだろう。「7時間の理想の眠り」は無理でも、「最初の深い眠りである黄金の90分の確保」を目指してほしい。

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◇Q.寝つきが悪くて困っています。

 いざベッドに入っても寝つけない人は、過緊張・過覚醒の状態が続いているケースが多い。

 日中は誰でも緊張・覚醒している。仕事や勉強、複雑な会話や機器の操作ができるのは、脳と体の覚醒スイッチが「オン」になっているからだ。このスイッチは、眠る頃には自然と「オフ」になるものだが、寝つきが悪い人は、布団に入ってもずっとオンのままなのだ。

 寝つきを良くするには、覚醒スイッチをオフにする必要がある。そのためには「深部体温を下げ、皮膚温との差を縮めること」と「脳をリラックスモードに変えること」が有効だ。

◇Q.お風呂とシャワー、どちらがよく眠れますか?

 覚醒スイッチをオフにする方法の1つ目、「深部体温を下げ、皮膚温との差を縮めること」には、入浴が効果的だ。入浴すると、一時的に体温が上昇した後、下がっていく。

 ただし、熱いお湯や長風呂は禁物だ。刺激が強すぎて交感神経が優位になってしまう。38~40℃のぬるめのお湯に15分ほど浸かるのがベストである。

 ゆるやかに体温が上がると、体温を一定に保とうとする恒常性(ホメオスタシス)が働いて、汗をかき、手足から放熱するなどして、皮膚温・深部体温は下がり始める。入浴して1時間半から2時間経つと、元に戻った深部体温はさらに下がり、皮膚温との差が1.7℃ほどと小さくなる。このタイミングで入眠すると、覚醒のスイッチがオフになって入眠モードとなり、「黄金の90分」が手に入るというわけだ。