業務提携に関する共同記者会見で、握手する日本郵便の千田哲也社長(右)と西濃運輸の高橋智社長業務提携に関する共同記者会見で、握手する日本郵便の千田哲也社長(右)と西濃運輸の高橋智社長=5月9日午後、東京都千代田区 Photo:JIJI

佐川急便を傘下に持つSGホールディングスが同業のC&Fロジホールディングスの買収に乗り出す、と報道された。C&Fロジには、同じく同業のAZ-COM丸和ホールディングスが買収を目指してTOB(株式公開買い付け)をしている。また、5月には、日本郵便グループとセイノーグループが業務提携を発表してもいる。物流業界で再編機運が高まっているのはなぜか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

「物流を制する者は、世界を制す」

 宅配の担当者は昼も夜もなく一生懸命、私たちに荷物を届けてくれる。物流は、日常生活に必要不可欠な要素の一つだ。スマートフォンの登場など経済のデジタル化で、ネット通販の利用が増加したこともあり、物流の重要性は高まりこそすれ低下することはない。「物流を制する者は、世界を制す」と指摘する専門家もいる。

 わが国では、4月からトラック運転手の残業が年960時間に規制された。2024年度、輸送能力は需要を14%下回るとの見方もある。人手不足で事業継続が困難になった中小の運送業者も多い。こうした「2024年問題」をきっかけに、物流業界は再編による効率化を避けられない状況に直面している。むしろ再編が進まないと、わが国の物流が危なくなる可能性がある。

 大手企業は、トラックの共同輸送などに取り組み始めている。過去、難しかった企業間の物流の連携が、2024年問題でようやく本格化し始めた。地方では、相対的に経営体力のある事業者が同業他社を買収し、地域に密着した運送体制の強化を目指すケースもある。グローバルに事業を展開するメガ物流企業と、特定地域を対象にする中小・中堅の地域密着型企業、それぞれ、あるいは相互に、物流業界全体で再編は加速する。それは、日本経済の効率化に必要不可欠だ。