サブスク料金も引き上げ?
アップルに必要な新しいヒット商品

 その展開が現実のものとなれば、アップルは一段のドル高圧力にさらされるだろう。その場合、わが国などでiPhoneの追加的な値上げが実施される可能性は高まる。さらに、Apple Musicなどのサブスクリプション・サービスの利用料金も引き上げられるだろう。

 4~6月期、アップルは7四半期ぶりに減益となった。アップルは、世界中の人が高い代金を支払ってでも手に入れたいと思うモノやサービスを提供し続けてきたが、今はそれが難しくなってきている。その状況下でアップルが追加的な値上げを実施すれば、消費者の満足度はさらに低下するだろう。

 すでに、世界のスマートフォン市場では需要が飽和している。米IDCによると4~6月期、世界のスマホ出荷台数は前年同期比8.7%減の2億8600万台だった。4四半期連続の減少だ。こうなると価格競争が激化するだろう。

 最近では、発売予定のiPhone14の生産が遅れているとの観測が浮上している。新商品投入スピード低下の恐れに加えて、ドル高への対抗策として既存商品の追加的な値上げが進むのであれば、アップルがこれまでのように世界の消費者に高い満足感を与えることは難しくなる。その場合、業績悪化懸念は追加的に高まるだろう。

 見方を変えれば、アップルは高成長を実現する新しいビジネスモデルを構築しなければならない局面を迎えた。ヒット商品が創出できれば、事業運営コストの増加やドル高による業績下押し圧力を吸収する力は高まるだろう。iPhoneの創造はそれを体現し、米国経済の成長に大きく寄与した。

 米IT業界では、アマゾンやマイクロソフトが「クラウドシフト」している。ブロックチェーンなどを用いた「ウェブ3.0」を視野に入れた取り組みも加速している。アップルがスマホからクラウド、さらにはウェブ3.0の世界をけん引するデバイスやサービスを生み出し、世界的なヒットを生み出せるか。このことこそ、中長期的なアップルのドル高への抵抗力と成長期待に大きく影響するはずだ。