ですから、相続税の課税対象となる場合は、その間の贈与をオープンにしなければなりません。さもないと、脱税になってしまいます。しかし、20年前、30年前のことを持ち出して、「兄貴のところは子どもが多くて、ずいぶん学費を支援してもらっただろう」とか「お姉さんの披露宴は私よりもずっと豪華だった」などと蒸し返すのは、話をこじらせるだけです。

生命保険金の受け取りできょうだいが険悪に

 その他にも生命保険は曲者です。相続のときにわかってしまうからです。

 亡くなった方が保険料を負担していた生命保険金を受け取った場合、生命保険金を相続により取得したとみなされます。つまり、亡くなった親が掛け金を負担していて、子どもが生命保険金を受け取ると、それは親から子どもに対する相続となるわけです。

 子ども全員が受取人になっていれば問題はないですし、跡取りが1人だけ受取人になっているのも理解できます。ところが、3人のうち2人だけが受取人であったことから、きょうだいがもめてしまったという例を聞いています。

 受取人だった2人はそれぞれ結婚して独立していたのですが、残りの1人である長男は独身で、亡くなったお母さんと同居していました。おそらく、お母さんは同居している長男に対して、普段から何かと援助をしていたのではないかと思います。それで、バランスをとるために残りの2人を生命保険金の受取人にしたのかもしれません。

 生命保険金には非課税枠があるのですが、相続に際しては相続財産に合算し、申告しなければなりません。ですから、2人は自分たちだけが受取人になることが明るみに出るのを恐れたわけです。しかし、隠し通すわけにはいきません。やがては長男の知るところとなりました。

 最終的には、なんとか収まったそうですが、一時はやや険悪な雰囲気になったと聞きます。無理もありません。自分の知らないところで、残りの2人が結託しているように感じたに違いありません。