大阪・関西万博開催まで1000日を切った。だが、全国レベルで機運が高まっているとは言い難い。20回超にわたり公開予定の特集『「大阪」沈む経済 試練の財界』の#4では、先頭に立って建設費の寄付金集めなどに奔走する関西経済連合会の松本正義会長を直撃。松本会長は「万博は国家イベントだ」と強調し、万博への関心を高める“秘策”などについて熱く語った。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)
関西経済復活の鍵は「単打」
万博は「ナショナルイベントだ」
――新型コロナウイルスの感染拡大で、関西経済は大きな打撃を受けました。
一部の業種は回復傾向にありましたが、直近は新型コロナの感染再拡大で、消費者マインドへの影響について再び警戒が必要な状況です。
特に製造業は原材料や資源の価格高騰など懸念材料が多いです。一方、非製造業は、全体としては回復傾向にあるとみられます。特にコロナ禍前に関西で好調だった旅行業は、だいぶ回復してきました。
今後のインバウンド(訪日外国人)政策にもよりますが、観光の早い回復に期待しています。コロナ禍の終息のめどが立たない中、感染防止と社会経済活動の両立が重要です。特に、入国規制は早期に緩和すべきでしょう。
――地盤沈下が続く関西経済をどう立て直していくべきですか。
戦前から戦後は繊維産業が、その後は家電産業が関西を地盤に日本全体をけん引してきました。しかし、その後、繊維と家電に続く産業を育てることができませんでした。
関西で自動車産業のような巨大な一つの産業をこれから育てることは現実的ではありません。一発ホームラン狙いではなく、ヒットを積み重ねるように多様な産業群を育てなければなりません。
関西には新しい産業の素地があります。関西経済連合会としては、健康医療、環境エネルギー、航空機、AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット)の4分野の育成に取り組んでいます。
また、ベンチャーの育成では、関西圏には各自治体が設立した工業技術センターなどのいわゆる公設試験研究機関があります。その人材や設備を活用して支援を強化していくべきです。
――関西経済復活の起爆剤として2025年の大阪・関西万博に期待が集まっています。
まず、東京の人は万博は大阪がやるものだと思っているのではないですか?
――そうだと思います。
(苦笑)。そもそも2025年日本国際博覧会協会(万博協会)の会長は経団連会長です。しかし、以前は資金集めなどで経団連の動きは鈍い感じでした。そこで、経団連を訪れ、当時の中西宏明会長に「(万博は)ナショナルイベントですよ」と早期の準備を強く訴えました。そしたら、「やりますわ」みたいな反応でしたよ(苦笑)。
今は参加国が130カ国まで増え、公式キャラクター「ミャクミャク」も露出しています。関西では万博への関心が高まってきた一方で、やはり全国規模ではまだ課題があります。
次ページでは、松本会長が万博の準備で最も懸念する点を挙げるほか、1850億円から上振れリスクが浮上する建設費についても見解を示す。さらに、万博への関心を高めるための、チケット販売に絡むある“秘策”も披露する。また、関西企業の存在感が低下する中、経済団体の存在意義が問われている。松本会長は経済団体の重要性を、関経連が取り組んだ実例を基に説いた。