「大阪」沈む経済 試練の財界#22提供:2025年日本国際博覧会協会

大阪・関西万博の開幕まで1000日を切る中、1850億円の会場建設費の上振れリスクが懸念されている。特集『「大阪」沈む経済 試練の財界』(全23回)の#22では、日本国際博覧会協会の石毛博行事務総長がインタビューに応じ、建設費のさらなる上振れを否定した。入場券に関しては、想定される大人6000円から価格を引き上げる方向で見直す可能性を示唆した。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)

「主要3事業の骨格はできつつある」
動きが鈍い海外勢を「急かしていく」

――大阪・関西万博の開幕まで1000日を切りました。準備状況はどうですか。

 まずこれまでの経緯を話します。2025年日本国際博覧会協会(万博協会)が設立され、3年半になりました。

 当初はテーマと場所、おおむねの開催時期が決まっていただけでした。万博は多くの人が関与するので、最初はテーマを表現する「プロデューサー」や機運醸成のための「アンバサダー」を決めていかないといけませんでした。

 20年夏に生物学者の福岡伸一さんらプロデューサー8人を選び、同時期にはロゴマークを発表しました。本格的に物事が動きだしたのがこの辺りからです。

 万博には三つの大きな事業があります。まず万博を代表するプロジェクトでもある、各プロデューサーのテーマ事業は、昨年初めには方向が固まってきて、今年4月の発表にたどり着けました。

 もう一つが、企業によるパビリオン出展です。19年春の段階では、「今どきパビリオン?」というような企業もあり、われわれも不安を抱えていました。

 けれども、ふたを開けてみると、企業の感触はそこまで悪くありませんでした。万博協会としてもたくさんの企業を訪問し、最終的には13企業・団体を決定することができました。企業にも、自社のブランド価値を高められるといった多くのメリットがあると理解してもらえたのだと思います。

 そして、万博会場を未来社会のショーケースに見立て、スマートモビリティやデジタルといったテーマを基に先進的な技術やシステムを紹介する未来社会ショーケース事業があります。これから協賛企業などを順次発表していきます。

 これら三つの事業に関して、骨格はできつつあります。まだまだ暑さ対策や感染症対策、警備対策など運営面で取り組んでいかなければいけないことがたくさんあります。ただ、2年前、全くの白紙の状態で計画もなかったようなところから見れば、かなり進んできたと考えています。

――企業のパビリオンでは大阪外食産業協会が出展を巡って混乱しています(本特集#8『大阪万博「出展内定辞退」ドタバタ劇の深層、大阪外食産業協会を悩ます2企業の苦境』参照)。

 資金面で協議中という状態です。万博協会としては、今資金面でサポートをしてくれる企業を一緒に探しています。

 ただし、すでにパビリオン建設などにコミットしてしまっている各企業が、追加でほかの団体に資金支援をするのは、企業内部の意思決定としても結構難しいところだと思います。まだ結論を出す段階ではなく、何とかできるよう努力しています。

――海外パビリオンの進捗に関して、遅れを指摘する声もあります。

 海外パビリオンは、参加国が費用を負担して独自に展示館を建設する方式を選んだ国が50に上ります。万博協会としては、開幕に間に合うよう来年4月には着工してほしいと考えています。

 ただし、各国にデザインを決めてもらわないと、実際に工事に当たる建設会社も動けません。多くの国は今年3月まで、アラブ首長国連邦のドバイで開かれていた万博にもパビリオンを出していましたし、まだ動きが鈍いことは確かです。

 過去の万博では、開幕後もパビリオンがまだ工事中ということは正直珍しくありませんでした。日本では避けたいですが、日程が固まっている国は50カ国のうち1割もないのが現状です。来月の参加国との会合で、急かしていきたいと考えています。

次ページでは、石毛氏が会場建設費の上振れは生じないと明言し、その根拠を示す。また、大人6000円と想定される入場券価格については、主要テーマパークの入場料を参考に見直す可能性を示唆。万博では珍しい、異なる価格の入場券を販売する方針も示した。