あえてひとことで言えば、傷つきやすい人とは、まじめ過ぎるほどまじめな人たち。ささいなことも自分の落ち度として深刻に受け止め、過剰に自分を低く評価してしまう。はたから見れば、それほど力まなくてもいいのに……ということにも肩に力が入ってしまう。重く深刻に受け止めて対応し、頑張り過ぎて疲れ果て、倒れてしまう。傷つきやすい人には、そんなことが少なくありません。
「まるで、『~しなければならない』という呪縛を自分で自分にかけているかのようなんです」と話してくれたのは、『とても傷つきやすい人が無神経な人に悩まされずに生きる方法』の著者、みさきじゅりさん。みさきさんは、ご自身も傷つきやすさに長く悩んできたHSS型HSPで、HSP研究の第一人者、E・アーロン博士の専門家認定プログラムを日本で初めて修了したキャリアコンサルタントです。
そんなみさきさんが、「傷つきやすい人が陥りがちな呪縛」の4パターンについて1つずつ紹介していく連載の3回目です。
HSP研究の第一人者エレイン・アーロン博士の専門家認定プログラム、日本人初の修了者。HSP専門のカウンセラーであり、キャリアコンサルタント(厚生労働省認定国家資格)
自身もナイーブな感受性と好奇心の旺盛さを併せ持つ「刺激追求型」のHSP(HSS)。
青山学院大学国際政治経済学部卒業後、東芝に入社。その後、ノキア・ジャパン、シリコンバレーのスタートアップ、アジア系IT企業などで、法人営業、外国人エンジニアの人材育成、大学生就活支援を経験。2017年、キャリアコンサルタントの国家資格取得。2018年、アーロン博士の「専門家認定プログラム」を修了。アーロン博士のサイトにてHSPに精通しているキャリアコーチとして正式に登録されている。クライアントは日本国内にとどまらず、ヨーロッパ、アジアなどからも訪れる。2018年9月、アーロン博士の講演を含むHSP Gathering Retreatsに唯一の日本人として参加するなど、国内外におけるHSPの最新動向に詳しい。<撮影:松島和彦>
「期待に応えねばならない」という呪縛
今回は、傷つきやすい人が陥りがちな呪縛の4パターンの3つめ、「期待に応えねばならない」という呪縛の解き方について紹介します。
傷つきやすい人は、何かを任されると、「相手が求める以上の成果を上げて応えなければ」と、頑張り過ぎるほど頑張ります。
たんに課題をクリアするだけではなく、「結果を出すスピード」「出来栄え」「目標値」などのすべてにおいて突き抜けたものでなければ期待に応えたことにならない、と考えてしまうからです。
なぜ、そんなふうに考えるのかといえば、傷つきやすい人は相手(または周囲の人々)の自分に対する態度や感情が非常に気になって仕方がないからなのです。
それは、決して自分をアピールしようなどという目的からではありません。相手が本当に喜んで、褒めてくれなければ、ホッとすることができないのです。
自分が安心できるためにも、確実に喜んでもらえるような結果を出さなければ……と、自らハードルを上げて頑張ろうとするわけです。
目標が100点満点だったら、120点くらい出さなければ本当に期待に応えたことにはならないと考えて、無理な目標を設定してしまいます。
実力以上のことを自分に課すことになるので、当然、達成できません。最後は「私は力のない人間だ」と自信をなくす結果に陥ってしまうわけです。
よくあるのは、例えば上司から「来週までに〇〇を提出してください」と言われるような場合です。
期限は「来週まで」とされているにもかかわらず、今日中にできていなければダメだというくらいの感覚で受け止めてしまうのです。
しかも、上司の要望の範囲内でまとめれば良いものを、誰がどこから見ても完璧な書類に仕上げなければならない、と自分でハードルを高くして、完成度の高いものを目指し始めます。
もし「これだけ売り上げを立てることを目標にしてほしい」と言われたのであれば、それ以上の営業成績を目指し始めます。
まして、上司から励ましの意味で「期待してるよ」なんて言われてしまうと、目標の数字や成果を出すだけでは足りない、上司が手放しで喜ぶほどの結果を目指さなければダメだと考えてしまいます。
そのために、まだ何かやれることがあるんじゃないか、まだ足りないんじゃないかと、自ら次々とハードルを設けて、高い理想を目指すことになってしまうわけです。