多くのメディアに対して、以前から知っていたはずなのに「今さら何だ」と言いたい気分はあるが、これは我慢しよう。彼らの「忖度(そんたく)」はいつものことだ。遅れはあっても、旧統一教会と政治について事実関係をはっきりさせておくこと自体は重要だ。

 以上のような訳で、予想の問題として、安倍氏の「政策」について冷静に検討できる機会はしばらくの間得られないのではないか。そこで今回は、安倍氏の政策について、特に経済政策である通称「アベノミクス」に的を絞って整理したい。

(1)アベノミクスは適切な政策だったのか、(2)現実のアベノミクスは成功だったのか、(3)アベノミクスに不足はなかったのか、継承すべきは何か、そして修正すべきは何か。

 あらかじめ結論を述べておくと、アベノミクスは、(1)正しい政策だったが、(2)現実に成功したとは言えず、(3)そもそも不足のある政策パッケージだった、ということになる。

日銀の「異次元金融緩和」に
財政出動が必要だった理由

 アベノミクスというと「3本の矢」で説明されるのが通例だ。1本目が「金融緩和」、2本目が「積極財政」、3本目が「成長戦略」である。

 アベノミクスは、経済運営にとってちょうど良いとされる「年率2%程度のインフレ」の達成を目指し、その過程を通じて経済成長と雇用の拡大を図ることを目的とする政策だった。

 そのために第一に期待されたのは、日本銀行による大胆な金融緩和政策だった。政策金利を低位に誘導するこれまでの政策だけでなく、市中(=民間経済)に供給するお金の「量」自体を拡大して、目標とするマイルドなインフレの実現を目指した。

 お金の「量」の拡大には、民間経済の経済主体が手元に持つ資産の構成を変えることで需要を生む効果が期待された。加えて将来も低位の政策金利が続くというシグナルとして機能し、さらに将来のインフレを示唆して経済主体の行動を変える「はずだった」。