目標設定が「自律的なモチベーション」に与える影響
上司が部下に対して、「自律性を促す支援」をするほかに、部下が「自律的なモチベーション」を高めるために期待できる方法はあるのだろうか。
伊達 モチベーションの向上に効果があるとされているのは、「目標設定」です。「難易度が高く、明確な目標を立てた方が、モチベーションが高まる」ということがわかっています。しかし、立てた目標が曖昧であったり、簡単にクリアできるものであったりした場合は効果がうまく発揮されません。
また、あまりに達成が困難な目標の場合には、「そこまではできない」「理不尽な目標設定」と本人が感じ、モチベーションもパフォーマンスもむしろ下がる危険性があることが明らかになっています。目標の難易度で重要なのは、「本人が同意できる水準にしておく」ということです。
企業では、半期ごとに従業員が目標を設定し、その達成状況を1on1などで確認する方法が行われている。こうした仕組みをきちんと運用すれば、モチベーションは高まっていく。ただ、いくら目標を立てたとしても、形骸化しては意味がないと伊達さんはいう。「評価面談の直前に目標管理シートを確認する」といった状況では、モチベーションの向上は期待できない。カタチばかりではなく、実際に目標を設定し、それに向かって業務を遂行していくことが重要だ。
伊達 目標達成に向けたプロセスの中で、上司から客観的なフィードバックを得ることが、従業員のモチベーションの向上や仕事の成長につながります。目標管理の仕組みが意義あるものとなるように、上司から部下に定期的に働きかけていくことも大切な姿勢だといえるでしょう。
上司から部下への自律性の支援に加え、会社から従業員への自律性の支援も重要だと伊達さんは解説する。
伊達 従業員が「自律性を会社から支援してもらっている」と思うことが大切です。組織的な支援において大事なことは、上司の働きかけと同様に、従業員自身が支援されていることを認識することです。会社が自律性を支援する制度を設けたとしても、従業員がそれを理解していなければ、「自律的なモチベーション」にはつながりません。また、「自律性を会社から支援してもらっている」という意識は、仕事のストレスを軽減する効果もあります。
自律性を支援する仕組みの構築と同時に、「自律性を歓迎している」ということを、会社が従業員にわかりやすくメッセージとして発していくことが大切なのだろう。従業員の「自律的なモチベーション」の向上は、個々の上司に任せるだけではなく、会社組織として取り組んでいくべき課題だといえる。