――「うちのような非IT企業にエンジニアを目指す学生が来てくれるわけがない」と、諦めるのはまだ早いということですね。

 その通りです。

内閣府「令和2年度 年次経済財政報告」IT人材が従事する産業より日本のIT人材はほとんどがIT企業で働いている(内閣府「令和2年度 年次経済財政報告」IT人材が従事する産業より)
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新卒エンジニア採用に力を入れている
非IT企業の特徴とは?

――新卒エンジニア採用に力を入れている非IT企業の特徴は?

 今はリーディングカンパニーが多いです。要は、従来の成功モデルを壊してでも変化し続けてきた企業だからこそ、業界を牽引する存在になれたのだと思います。

 変化とは何か。直近ではDXや内製化です。三菱UFJ銀行や日揮、ファーストリテイリングといった企業は、DXを中期経営計画の中核に据え、専門組織を組成し、他社に先んじる覚悟で新卒エンジニアの採用・育成に取り組んでいます。

――非IT企業がDXや内製化を進める上で、どのようにエンジニア組織を作っていけばよいのでしょうか。

 最初からエンジニアを採用するのがいいかというと、必ずしもそうではありません。まずは社内の人材のリスキリングから始める企業も多く見られます。結局は、そのほうが近道なのです。

 なぜなら、中途エンジニアの求人倍率は大幅に上昇していて、そう簡単には採用できません。採用できたとしても、業界特有の慣例や仕事の仕方など、ITを知り尽くしているからこそ馴染みにくいところもあります。

2022年9月15日発表 dodaの「転職マーケットの2022年9月15日発表 dodaの「転職マーケットの“今”を知る! 転職求人倍率レポート」より、転職求人倍率データ(業種別)

 そこで、ファーストステップとして、社内の情報系学部出身者や、ITが好きでかじっていましたというような素養のある人材に声をかけ、エンジニアを迎えるためのカルチャー変革も込みで取り組もうとする企業が多いのです。

 次に、中途エンジニアの採用です。でも、やはり非常にハードルが高い。キーマンが1人、2人採用できれば万々歳だと思います。

 その次に新卒エンジニアの採用です。新卒エンジニアの良さは、中途エンジニアと比較して安定的に質の高い人材が採用できるという点です。また、これは新卒エンジニア採用に力を入れているどの企業も口にすることですが、最近の新卒エンジニアは非常に優秀で、驚くほど成長が速い。人材採用を未来への投資ととらえれば、新卒エンジニア採用はROI(費用対効果)がものすごく高いのです。