写真:財務省の看板政府による24年ぶりの為替介入の実務を担った財務省 Photo:PIXTA

円安を阻止するため、政府が24年ぶりとなる為替介入を実施した。しかしこれは、「二重の意味で無駄玉」だった。その理由をお伝えしたい。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

金融緩和継続の裏での為替介入は
アクセルとブレーキを同時に踏む愚挙

 何とも無駄で有害なことをしてくれた。9月22日に財務省が実施を決めた円買い・ドル売りの為替介入のことだ。筆者はこの介入を「無駄玉介入」と名付けることに決めた。

 念のために補足すると、市場で介入を実施するのは日本銀行だが、介入を決めて指示するのは財務省である。日銀自身が為替市場への介入を決めるわけではない。

 そればかりかこの日には金融政策決定会合が行われて、金融緩和政策を継続することが決まった。黒田東彦・日銀総裁は、日本経済は金融緩和を止めることが適当な状況ではないことと、従って今後しばらくの間は利上げが不適切であることを記者会見で丁寧に説明した。

 日銀が金融緩和政策の維持に強い意思を見せたことは、外国為替市場では間違いなく円安材料であり、それは政策効果の一部でもある。しかし、財務省はこの日に円買い介入を行った。これは、アクセルを踏んでいる最中に、同時にブレーキを踏むような愚挙である。普通ならどちらかが間違っているし、直接的には介入を決めた人々が明白に「悪い」。

 しかし、首相官邸か財務省の中やその近辺にいると思われる、世間の円安批判が気になる官僚や政治家にとっては、「何かやらないと気が済まない」心境だったのだろう。