円安で困っている
庶民の生活をどうするか?

「日本経済のマクロ的な成長のためには円安がいいかもしれないが、円安で困っている庶民の生活を捨てておくのか?」という議論はあり得るだろう。もちろん、庶民を捨てていいはずがない。

 しかし、そのために為替レートを丸ごと円高にしようとするのは、考えとしてあまりに「雑」なのではないか。

 端的に言って生活困窮者に対しては、給付金なり減税なりでより多くの可処分所得を持てるような再分配政策を強力に行う必要がある。為替レートに働きかけて、効果の乏しいところでお茶を濁されては困る。

 アベノミクスの「3本の矢」として有名になった、「金融緩和」「積極財政」「成長戦略」は、いずれも必要であると同時に適切な政策だった。しかし、アベノミクスには残念ながら分配政策が欠けていた。

 真剣に検討すべきは、一時の為替介入ではなく大規模な再分配政策だ。例えば、ベーシックインカムの実現を真剣に考えていい。ベーシックインカムは、丸ごと実現しなくとも部分的に実現することができる。また、「ベーシックインカム的政策」(子ども手当の支給や基礎年金の保険料の全額国庫負担など、方策は有望なものが複数ある)を実現するのでもいい。

 政府には、「二重の意味で無駄玉」な為替介入などもう考えずに、広い範囲で継続的に実施される経済的弱者へのサポートを考えてほしい。