警察もグルなので、誰にも助けを求められない

 男たちは、「今後おとなしくしなければ、カンボジア国外を含めた他の犯罪拠点に売り飛ばす」と警告した。アジア各国メディアの報道を総合すると、実際に何度も売り飛ばされたり、被害者家族が多額の身代金を要求されたりしたケースは数え切れないほど多い。

「(地元)警察の車は日常的に区画内に入ってきていました。でも警察官はジーンズなどカジュアルな服装です。取り合ってはくれません。通報しても、逆にその通報内容が犯罪集団の元にいくだけ。グルなんです」

 カンボジアは、35年以上の長きにわたりトップに君臨するフン・セン首相の支配下にある。2017年には最大野党が解党に追い込まれ、独裁体制がさらに強化された。さらにこの国は、東南アジアで最も「親中」的な外交姿勢を取ってきた。

 米国務省は今年7月に発表した人身売買報告書で、カンボジアを「ティア2のウオッチリスト」から最悪レベルの「ティア3」に格下げした。同報告は、カンボジアにおける現状について、「当局は、共謀が疑われる報告の多くに関与した役人を調査せず、また刑事責任を問わなかった」「近年、シアヌークビル州では、中国人が経営するカジノ、娯楽施設、その他の商業企業が急速に増え、それらがほとんど規制されていないため、カンボジアの女性や少女の性売買や強制労働が増加した」などと指摘している。