暴力、拷問、暗い部屋へ監禁、全裸にされて銃を突き付けられ…

「真夜中にもかかわらず、突然7~8人の男が私の部屋になだれ込んできました。地面に押さえつけられたんです。『何をしたんだ』『何を送ったんだ』と聞いてきました」

 テオ氏は用心深く物干し置き場などに自分のスマホ3台を隠していたが、どうやら犯罪集団はスマホの電波を探知する方法を知っているらしい。隠してあったスマホは、すぐに見つけられてしまった。

 その後、男らは「パスワードを教えろ」と要求。拒むと何度も平手打ちをくらい、椅子を投げつけられた。耐えられなくなったテオ氏は結局、スマホに保存していたありとあらゆるパスワードを教えてしまった。これで、家族の居場所や、銀行口座やSNSのアカウントなど自身のあらゆる個人情報が犯罪集団の手に渡った。当然、現場で集めた証拠には以後アクセス不能となる。

 テオ氏は両足を拘束されて、2日間にわたり暗室に閉じ込められた。監禁された部屋は「アンモニアの臭いがすごかった。小便と大便の臭い、そして、何かの死体のような臭いがするんです。ネズミなのか魚類なのか何なのか分からなかったけど。とにかく、臭くて息ができない。1日1回白飯が一皿投げ込まれるのですが、とても食べられなかった……」。

 暗室から出ることを許されたテオ氏を待っていたのは、誰も助けてくれないという絶望、そして別の犯罪拠点に売られる危険だった。これはまさに、だまされてカンボジアにやってきた多くの外国人が共通して証言するところだ。

 テオ氏は、服を着替えるよう命じられ、そしてスッポンポンに脱がされたという。男たちはその全裸姿を撮影した。次に、銃をテオ氏に向けた男が奇妙なことを命令した。服を着て、あたかも自分の意思でここに来て、喜んで仕事をしているように演じろと言うのだ。

「マレーシアに帰国した後に気づきました。これは、私が強制的に働かされたのではないという証拠づくりだったのだと」