メモリー半導体市況悪化を示す韓国の生産減

 15年半ばごろから17年末ごろまで、世界の半導体市場は急成長した。リーマンショック後の世界経済では、アップルや韓国のサムスン電子、中国のシャオミなどが生産するスマホが急速に普及した。

 それに伴い、音楽や動画、広告などのサブスクリプション・ビジネスも急成長を遂げた。米国のGAFA(Google・現アルファベット傘下、Apple、Facebook・21年10月からメタに社名変更、Amazon.com)や中国のBAT(百度・バイドゥ、阿里巴巴集団・アリババ、騰訊・テンセント)などの有力IT先端企業は、ユーザーのデータを低コストで手に入れた。各社はデータセンター向けの設備投資を積み増し、ビッグデータを分析してより新しいサービスやモノを創出した。

 こうしてサムスン電子や韓国SKハイニックスが高いシェアを持つメモリー半導体、台湾積体電路製造(TSMC)がシェアを拡大するロジック半導体の需要が拡大した。18年以降、メモリー、ロジックともに半導体の需要拡大ペースは一服したが、20年以降は新型コロナウイルスショックによって各国でテレワークなどが急増。そうした結果、世界のメモリーとロジック半導体の需要はさらに増えた。

 しかし、21年春頃からメモリー市況は軟化し始めた。21年4月以降、メモリー半導体が主であるSKハイニックスの株価が下落。8月以降はサムスン電子の株価の上値が抑えられはじめた。そうして22年年初以降、両社の株価下落が鮮明化。7月には韓国の半導体出荷が急減し、8月の半導体生産は前年同月比1.7%減となった。在庫も急速に積み上がっている。

 背景に、世界全体でスマホやパソコンの需要が減少していることがある。また、ウクライナ危機以降、各国で物価の上昇ペースが一段と加速し、電力料金などが高騰するのに伴い、個人消費は下押しされている。

 中国では本格的な景気後退の懸念が高まっている。メモリー需要の拡大をけん引してきたデータセンター向けの設備投資も鈍化している。そうした結果、韓国企業が世界トップシェアを持つメモリー半導体市況の悪化が鮮明になっている。