激化する中学受験、難関校が小学生に求める1つの人物像Photo: Adobe Stock

生まれ順によるきょうだいの性格の違いを分析したベストセラー『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』著者の五百田達成さんと、東京・吉祥寺を中心に都内に展開する進学塾VAMOS代表であり、『ひとりっ子の学力の伸ばし方』著者の富永雄輔さんは、「世の中全体がひとりっ子化している」と口をそろえる。その背景に迫った前編記事に続き、後編となる本記事では「最新の中学入試の傾向」「ひとりっ子の家庭の強み・弱み」について語ってもらった。

問題集だけでは突破できない最近の中学入試

五百田達成(以下、五百田):私ももう30年以上前に、中学受験をしたんですが、今の中学受験の問題はものすごい進化していると聞いています。今の中学入試は、小学6年生のどんな力を測ろうとしているんですか?

富永雄輔(以下、富永):間違いなく今の中学受験の入試問題を見ていると、短期集中の暗記の必要性は確実に減っていっています。極端な言い方をすれば、Googleで調べればすぐにわかるよっていう知識は出題したくないんでしょう。

激化する中学受験、難関校が小学生に求める1つの人物像富永雄輔(とみなが・ゆうすけ)
進学塾VAMOS代表
幼少期の10年間を、スペインのマドリッドで過ごす。京都大学経済学部を卒業後、東京・吉祥寺に幼稚園生から高校生・浪人生まで通塾する「進学塾VAMOS(バモス)」を設立。現在吉祥寺、四谷、浜田山、お茶の水に校舎を構える。入塾テストを行わず、先着順で子どもを受け入れるスタイルでありながら、毎年塾生を難関校に合格させ、その指導法は、「プレジデントファミリー」「アエラウィズキッズ」「日経キッズプラス」などでも取り上げられる。自身の海外経験を活かして、帰国子女の教育アドバイスにも力を入れているほか、トップアスリートの語学指導、日本サッカー協会登録仲介人として若手選手の育成も手掛けている。著書に『ひとりっ子の学力の伸ばし方』など多数。

 非常に面白いのは、いわゆる難関男子中学の国語の問題を見てると、主人公がシングルマザーだったり、女子高生だったりと、12歳男子とは全く違う立場の登場人物の生き方を題材にした文章を出題して、登場人物の考え方や心情をどう理解するかと問うんです。

 1つ具体例を挙げると、3年前ぐらいの開成中学の国語では、母親がバリバリ働くキャリアウーマンで、父親が主夫をしている家族の物語が出題されました。仕事には自信がある一方で、家事を夫に任せっきりだった母親の心理が描かれた文章です。

 もし、母親が主婦の家庭で育った小学6年生がこの文章を読んだら、どう感じるでしょうか。自分の家庭の常識からは程遠い世界の話なので、限られた解答時間の中で解釈するのは、とても難しい問題だったと思います。

 こんなふうに、出題する学校側は、受験生に知識だけではカバーできない「人間力」を求めているんです。言い方を変えると、受験勉強だけをやってきたガリ勉は、とりたくないということかもしれません。