子どもの認知発達を考えると、個人差があるものの、幼児期は前操作期にあたる。この段階の子どもは、たとえば、同じ数のおはじきを2列に並べ、目の前でそのうちの1列の間隔を広げ、どっちの方がおはじきが多いかと尋ねると、長くなった列の方が多いと答える。ひとつひとつ数えれば同じ数だとわかっても、広がっていると多いように感じてしまう。

 児童期、つまり小学生の時期は概ね具体的操作期に相当する。この段階になると、概念的操作ができるようになり、おはじきの列の長さが変わっても数が変わらないことを理解できるようになる。

 また、この時期になると、論理的思考ができるようになり、系列化や分類の課題に成功するようになる。系列化というのは、たとえば長さの違う棒を長い順に並べたり、大きさの違うビー玉を小さい順に並べたりすることである。分類というのは、たとえば色と形の違う図形を色で分類したり、形で分類したり、より複雑になると色と形を組み合わせて分類したりすることである。ただし、論理的に考える対象は現実に存在する具体的な物に限られ、言語のみによる抽象的思考はまだできない。

 ゆえに、小学校の中学年くらいまでの段階では、具体的なおはじきやビー玉などを使って数の概念の理解を促す必要がある。小学校5・6年生や中学生あたりから形式的操作期に入っていく。この段階になると、仮説的な概念的操作ができるようになり、抽象的な論理的思考が可能になる。

 思考の内容と形式を分離し、形式のみに関して抽象的に考えることができるようになるのが、この段階の特徴である。たとえば、「ゾウは犬よりも小さい」と「犬はスズメより小さい」という2つの仮説的な前提を踏まえて、「ゾウはスズメより小さい」という判断ができるようになる。現実には、ゾウは犬やスズメよりもはるかに大きいので、具体的操作期段階の子どもは、「そんなことはあり得ない」ということで先に進めないが、形式的操作期になると、現実的にあり得なくても、「A<B」かつ「B<C」なら「A<C」といった形式論理に基づいて、「ゾウはスズメより小さい」という判断ができるようになる。

 このように小学校の終わりから中学生あたりになると抽象的思考が可能になる。