ここから言えるのは、内容についての質問を作成すること自体に理解を促進する効果があるということ、つまり質問をつくろうとする過程で読みが深まり、理解が促進されるということである。この他にも、多くの研究により、内容に関する質問を作成させることでその後のテストの成績が向上することが実証されている。

 これは、自問自答の効果に通じるものと言える。中学生を対象とした実験でも、文章の意味を自問自答するように促すことで、ただ読んだ生徒たちよりも読解の成績が良くなったことが示されている。

 自問自答を促す方法として、質問作成を位置づけることもできる。「ここはどういうことだっけ?」「どうしてこうなるんだっけ?」「ここは何を言いたいんだろう?」「どこがとくに重要なんだろう?」と自問自答しながら読んでいくとよいのだが、自発的に自問自答しながら読む習慣のない子どもたちに自問自答を促すには、質問を作成させるというのが効果的だろう。

具体例を考えることで、抽象的概念の理解が進む

 算数や数学、理科などはもちろんのこと、国語や社会でも抽象的な概念がたくさん出てくる。その定義を覚えたり、公式を覚えたりすれば、とりあえずは問題を解くことはできるかもしれないが、心から納得のいく理解ができていなければ、ほんとうにわかったことにはならない。

 心から納得できるようにするには、具体例を考えるのがよい。私は、大学生や社会人を相手に長年心理学の授業をしてきたが、心理学で学ぶ概念は抽象的なものが多く、定義を示したところで、表面上は「なるほど」と思いはしても、心から「わかった!」という感じになりにくい。そこで、生きた知識になるようにといった意図のもと、できるだけ日常生活でだれもが経験しがちな具体的出来事に関連づけて解説するようにしている。