冷静に考えれば、家事や育児をしていることを「守る」と表現するのはおかしい。泥棒や自然災害から家庭を守るというのなら、肉体的にも男性の方が向いている。にもかかわらず、なぜ女性が「家庭を守る」ことを求められたのかというと、夫が徴兵された間に「銃後を守る」というところから来ているのではないか。

 いずれにせよ、自民党の専業主婦を「家庭長」とする思想、つまりは「女性は家庭を守る」という考え方は令和の今も健在だ。だから、「こども庁」が土壇場で「こども家庭庁」に変更される。子どもは家庭長(母)が守る、「家庭の付属物」というような扱いなので、欧米のように、子どもを「1人の独立した人間」と見ることに強い抵抗があるのだ。

 選択的夫婦別姓に反対しているのも同じだ。家庭を守るべき家庭長(妻)が、夫と異なる姓を名乗るなど、自民党的国家観・家族観からすれば許されることではない。そういう思想が根っこにあるので、自民党議員は、女性を「産む機械」などと呼んだり、「女性がいる会議は長い」なんて失言をしてしまう。「女は家庭に入って子どもを産んで育てろ」が本音なのだ。

旧統一教会とウマが合う自民党、「女性」の役割においても一致

 自民党が「家庭長」と言い出した1979年というのは、約2年続いた福田赳夫内閣が終わったタイミングだ。選挙では日本共産党が39議席と大躍進して、自民党としては「共産主義勢力」に対して危機感を強めていた時だ。

 そこで自民党の選挙で心強い味方となっていたのが、共産主義との戦いを掲げて、岸信介、福田赳夫という政治家との距離をつめていた旧統一教会系の政治団体「国際勝共連合」である。

 この5年前の1974年5月7日、文鮮明氏が帝国ホテルに1700人を集めて開催された「希望の日晩餐会」では、岸信介元首相が名誉実行委員長を務め、当時大蔵大臣だった福田赳夫氏がこうスピーチした。

「アジアに偉大なる指導者現る。その名は文鮮明である」

 偶然かもしれないが、そんな偉大な指導者も、「世界平和は真の家庭から」ということを強く主張していた。5年前に自分を褒め称えて福田氏率いる自民党が、「家庭長」構想を公表した時は、さぞ喜んだに違いない。

 さて、現代に戻ろう。10月20日、世界平和統一家庭連合の記者会見で、スーツ姿の男性17人がズラッと並んだ。これは教会改革を主導的に進めていく男性たちで、2世信者問題の対応にもあたるという。ただ、この様子を見ていた紀藤正樹弁護士はバッサリ切り捨てた。

「女性がいない。これは統一教会の教義である男尊女卑を表している」

 そういえば、第2次岸田改造内閣では女性の入閣は2人しかいない。自民党4役を務める女性議員はゼロになった。旧統一教会と何十年も蜜月だったのは、やはりこういうところもウマが合ったのだろう。

 陰謀論の世界では、「戦後の自民党を裏で操っていたのは旧統一教会」なんて話がまことしやかにささやかれている。が、この政党の「女性」と「家庭」に対するスタンスを見ていると、あながちデタラメではないような気もしてしまう。

 旧統一教会と縁を切っても、自民党には「家庭」の重要性を説く支持団体が山ほどある。ということは、自民党政権が続く限り、残念ながら、日本人の「女性は家庭を守る」という病も治らないのではないか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)