不快な誹謗中傷の言葉を直視して見えた根本の問題
「気持ちはわかるが、その程度のことも切り抜けられないで自衛官なんて勤まるかよってんだ 周りは試してんだよ ヌクヌク生きたいなら自衛隊なんか入るんじゃねぇっての」
「飲み会で尻や胸を触られたくらいで騒ぐやつwww 飲み会で練習と称して首キメされたくらいで騒ぐやつwww」
「だいたいよ、血気盛んな男達の場所に女が入る この意味をちゃんと考えろよ 女の見通しが甘いとしか言えないわ 外出たら7人の敵がいると思えないバカは働くな!」
「男も女もジャンダーも同じだから触り返したらええだけやん」(すべて原文ママ)
これらの誹謗中傷はすべて、陸上自衛官時代の性被害を告発した五ノ井里奈さんのもとに送られたものである。五ノ井さん本人がスクリーンショット画像をTwitterで投稿したものを引用させていただいた。このほかにも個人の尊厳を傷つける侮辱や事実無根の暴言も多くあった。
読んでいるだけでも気分が悪い、怒りが込み上げるという人も多いだろう。ただこの実情をしっかり見てほしい。実はこれらの誹謗中傷には、「なぜ日本ではいつまで経ってもハラスメントがやめられないのか」という問題を考えるうえで、ヒントになることが多く含まれている。
セクハラやパワハラ撲滅が叫ばれて久しいが、厚生労働省によれば、総合労働相談コーナーには年間130万件も相談がある。経団連の調べでも「5年前よりもパワハラ相談が増えた」という会員企業が4割になったという。
つまり、「許されることではない」「もはやそういう時代ではない」と口では言いながら、陰では部下や後輩をネチネチでいじめて、女性には性的な嫌がらせをする人が後を絶たないというのが、「美しい国、日本」の現実なのだ。
なぜこうなってしまうのか。個人的には、先ほどの誹謗中傷のような考え方を持つ日本人がかなり存在しているからではないかと思っている。この考え方を端的に言えばこうなる。
「ちょっと嫌な目にあったくらいでいちいち騒ぐなよ、これくらいの辛いことを乗り越えられないと、一人前の社会人になれないぞ」