“関係性の深さ・関係性の質”が重要になっている

 昨今の政府の副業・兼業促進の流れを受け、副業解禁を検討している企業も少なくない。だが、エンファクトリーが行っているように、副業を全てオープンにしさえすれば、本当にうまくいくのだろうか。副業を導入するうえで注意するべき点は他にないのだろうか。

“複業”で人と組織を成長させる会社の“たった1つのルール”とは?

加藤 注意しなくてはならないのは、その組織に“関係性の深さ・関係性の質”という部分が備わっているかです。そこが備わっていないと、エンターミナルで、どれほど面白い、素晴らしい「複業」の事例発表を聞いたとしても、「身近な人」の取り組みということにならず、ハードルを下げる効果が得られないからです。弊社でも、コロナ禍により、顔を合わせて直接にコミュニケーションする機会が減ってきたことで、特に新しく入った人などは関係づくりが難しくなっているところがあります。「人が財産」ということが機能している会社ほど、人と人との関係性の質が下がってくると、「偶然のつながりによって生まれる創発」が起こりにくくなります。ですから、ただオープンにしさえすればいい、というわけではなく、そのための基盤となる土壌づくり、関係性が必要なのです。ちなみに、弊社では、趣味を通じたクラブ活動やランチ会、社長1on1など、リアルな関係性構築や相互理解促進のための取り組みも継続して行っています。

 気になるのは、決して多くはないとはいえ、副業を続けるうち、本業を辞める人や離職する人が出てきてしまうことだ。おそらく、優秀な人ほど、その可能性は高いだろう。優秀な人材が副業によって辞めてしまうリスクについては、加藤さんはどう考えているのだろう。

加藤 お察しのとおり、弊社では退職理由が「独立・起業」というのがいちばん多いです。ただ、独立しても連携したほうがお互いにメリットのある場合が多いので、退職もしくは独立・起業する社員をパートナーとしてゆるやかな関係を続け、「相利共生」する「フェロー制度」という仕組みがあり、人的資産が関係性資産に変化するだけとも言えます。新しい事業を生み出すなど、ビジネスを前に進めていくためにも、企業の外と内の境界を溶かし、アルムナイや外部の人材を活用し、また、内側からも外側へと流れていくような、“内外を巡る人と情報の流れ”をつくっていくことにより、企業の人的関連資産を活性化し、充実させることが大切だと考えています。