治療は早い方がいいが、「3カ月以上たたないと後遺症と認められない」の壁

 ドネペジルの承認も、なんとか早められないものだろうか。

「自費診療なら使えると勘違いしておられる方もいるかもしれませんが、日本の制度ではドネペジルのような処方薬は、使用法が承認されていないと入手することはできません」

 また、後遺症を発症する確率は、高齢者よりも若者のほうが高く、コロナの症状の重い軽いに関係なく起きるため、どのような人が後遺症になりやすいかが分からないのも、後遺症のやっかいな点だ。

「コロナ後遺症は、症状が完全に固定してしまうと、なかなか治療しにくいといわれています。治療を開始するなら早いほうがいいのですが、困ったことにコロナ後遺症と診断されるには、3カ月続かないといけないという判断基準もネックだと思います。

 どんな病気でも、症状が軽いうちに治療を開始した方が早く治ることは良く知られています。コロナ後遺症の治療も3カ月間診断がつくのを待って、重くなってから治療を開始するというようなことになっては治るものも治りません。このために、どのような人が後遺症に移行しやすいのかを予測する診断法の開発も重要です。我々は現在、このような研究にも取り組んでいます。ドネペジルは副作用が少なく使いやすい薬だと思いますので、後遺症に移行しやすい人を診断して、できるだけ早い段階で使用できるようにしていきたいと考えています」

監修/近藤一博(こんどう・かずひろ)
東京慈恵会医科大学ウイルス学講座主任教授
1985年、大阪大学医学部卒業。90年、同大学院博士課程修了。91年、同大微生物病研究所助手。93~95年、スタンフォード大学留学。96年、大阪大学大学院医学系研究科微生物学助教授。2003年、東京慈恵会医科大学ウイルス学講座主任教授。14年、同大疲労医学研究センター教授(兼任)。著書に『疲労ちゃんとストレスさん』(河出書房新社)、『うつ病は心の弱さが原因ではない』(河出書房新社)、『うつ病の原因はウイルスだった』(扶桑社)がある。

【訂正】記事初出時より以下の通り訂正します。
5段落目:「約2%が解雇・退職・廃業に至っており」→「約8%が解雇・退職・廃業に至っており」
(2022年11月19日 12:29 ダイヤモンド編集部)