金融政策の再検討迫られるECB
正常化の次は物価と景気のトレードオフ
欧州中央銀行(ECB)はコロナ禍からの経済回復の下、ウクライナ問題によるエネルギー価格などの高騰がある中で金融緩和を解除しつつ金融政策の正常化を急いできた。
具体的には、コロナ対策として導入したPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)を3月末に、量的緩和策としてのAPP(資産購入プログラム)を7月初めにそれぞれ終えることで資産買い入れから脱却した後、7月、9月、10月の理事会でそれぞれ0.5%、0.75%、0.75%という急速な利上げを行った。
しかし、政策金利(資金供給オペ金利)が2%と景気に中立的とみられる水準に達する中で、ユーロ圏経済は2023年にかけて厳しい局面を迎えることが想定され、金融政策の運営を再検討する必要が出てきた。
ユーロ圏では主要なエネルギー源であるロシアからの天然ガス供給に大きな不透明性があり、企業や家計の経済活動に深刻な打撃を受ける恐れがある。
実際、国際通貨基金(IMF)が10月に公表した世界経済見通しは、23年のユーロ圏の経済成長率をわずか0.5%と予測したほか、ラガルドECB総裁も10月理事会後の会見で景気後退のリスクを認めた。