ファイザーCEOが明かすコロナワクチン開発の内幕、9カ月で完成できた勝因とはPhoto:NurPhoto/gettyimages

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。

日本でもおなじみ「ファイザーのワクチン」は
わずか9カ月間で作られた

 2020年初頭に感染拡大が始まり、世界中の人々の生活や、各国の経済に強烈な打撃を与えてきた新型コロナウイルス。昨今の日本では、一時よりも報道が少なくなったほか、行動制限が解かれたこともあり、まるで収束したかのようなムードが漂っている。

 しかし、日本では今なお数万人規模の新規感染者が日々発生している。変異株のバリエーションも増えており、「第8波」や「インフルエンザとの同時流行」への懸念や警戒感も強まってきている。

 それでも社会全体が平穏を取り戻しつつあるのは、死者や重症者数が減っているからだろう。これには変異株の性質もあるようだが、ワクチンが行き渡り、その効果によるところも大きいと思われる。

 ワクチンについては、賛否さまざまな意見があり、副反応や後遺症を危険視する人も少なくない。しかし、多くの人を感染から守ったのは事実であり、短期間で優れたワクチンを開発し、世界へ供給したファイザーとモデルナの功績は称賛され得るものだと思う。

 今回取り上げる書籍『Moonshot(ムーンショット)』は、ファイザーの現CEO(最高経営責任者)、アルバート・ブーラ氏が、2020年に新型コロナウイルスワクチンの開発をわずか9カ月で成し遂げた苦闘の日々を自らつづったノンフィクションだ。

 世界最大のメガファーマが、なぜこれほどまでに俊敏な動きができたのか。その過程におけるイノベーションとブーラ氏の卓越したリーダーシップを知ることができる一冊だ。

 ブーラ氏は1993年にファイザーに入社し、数々の幹部職やCOO(最高執行責任者)を経て、2019年1月からCEOを務めている。