増え続けている、シニアの派遣スタッフ登録と就労

 リクルートスタッフィングが、シニア層の人材派遣に注目するようになったのはおよそ10年前―― “団塊の世代”が定年退職し、企業は多くの知見やスキルを失った。結果、豊富な経験を持つ人材を企業が求め、シニアの派遣が活気づいたという。

 60歳を境に非正規雇用者の比率が大幅に上昇するという行政のデータ*4 のとおり、リクルートスタッフィングのシニアの新規登録者は増え続け、活躍の幅が広がってきている。最高齢は男女ともに78歳(2022年時点)で、事務仕事を颯爽とこなしているそうだ。

*4 内閣府「令和3年版 高齢社会白書」より

川畑 2007年の雇用対策法改正で、派遣スタッフも含め、採用時に年齢制限を設けることが禁止されているので、私たちも「シニア派遣」というカテゴリーを設けて人材をご紹介しているわけではありません。企業から「○○のスキルや専門知識を持っている人材がほしい」という要望があったときに、ご紹介できるスタッフが結果的にシニアだったというのがよくあるケースです。たとえば、あるIT企業の人事担当者は「募集条件の最優先事項を“スキルの有無”に設定し直した結果、人材の幅が広がった」とおっしゃっています。また、数10人単位でシニアを採用している某企業は、「シニアの雇用を最初から考えていたわけではなく、たまたま一人を採用したところ、職場の評価が高かったので、シニアの人数が増えていった」とのことです。年齢を条件に付さないことでハイスキルなシニア人材を採用できる企業が目立ってきています。

 リクルートスタッフィングを介して就労している60歳以上の派遣スタッフの職種は、「IT・エンジニア・技術・建築」と「オフィスワーク」が約4割ずつ――合わせて約8割を占める。「リクルートスタッフィング=事務系に強い」という特色はあるものの、この数字から、スキルを持つシニアが企業に重宝されている傾向が垣間見える。たとえば、外国語が堪能な70代の女性Aさん(前出)は、「業務内容に“2つ以上の外国語使用”とあり、自分のできる外国語を仕事で生かしたい」と考え、語学力を求める企業のニーズとマッチした。IT企業でサーバーメンテナンスなどに携わるCさん(70代男性)は「退職して暇を持て余していたときに、いままでの職歴のなかでいちばん得意な仕事をたまたま見つけたから」という理由で働き始めている。

川畑 「シニアはパソコンを使えないのではないか?」という懸念をよく耳にしますが、それは杞憂に終わることが多いようです。一例ですが、当社を介して就労しているシニアスタッフにはエクセルのスキルやIT系の知識を持つ方も多く、若い世代に引けを取りません。人材派遣はいわゆる「ジョブ型」なので、年齢に関係なく、職種とスキルの有無で時給が決まります。シニアの派遣スタッフのなかには、時給4000円以上で働いている方も複数いらっしゃり、専門性の高い仕事をこなしている方が少なくありません。