さまざまな経験を積んだシニアの行き先は……

 2020年時点で、「高年齢者雇用確保措置*5」を実施している企業は99.9%(従業員31人以上の企業約16万社対象)、そのうち「希望者全員が65歳を超えても働ける企業」が8割以上を占めている*6。こうした数字の推移を見ても、今後、かなりの高齢まで企業で働き続けるシニアは増えていくだろう。一方で、一定の職位にある50代の社員を役職から外して給与減額する「役職定年」を設けている企業も多い*7。はたして、役職定年から定年退職までの長い期間、能力をあまり発揮する機会のないまま働き続けることがベストな選択なのか――それを思い悩むシニアも多いにちがいない。川畑さんは「同じ企業内で働き続けるのか、それとも、退職して、派遣やフリーランスで働くかを一度立ち止まって考えるとよいのでは?」と提言する。

*5 定年を65歳未満に定めている事業主は、次のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければならない。(1)65歳までの定年引き上げ (2)定年制の廃止 (3)65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入 *継続雇用制度の適用者は原則として「希望者全員」。(厚生労働省 高年齢者雇用安定法改正の概要より)
*6 内閣府「令和3年版 高齢社会白書」より
*7 ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド社)の調査など(「週刊ダイヤモンド」2022年10月8日・15日合併号より)

川畑 ある程度の年齢に達した社員を対象に「役職定年」があったり、定年退職者は再雇用といったかたちで仕事の範囲を限定されたりすることで、組織に“残らせてもらっている”と感じてしまう方もいるでしょう。一方、派遣やフリーランスという働き方では、自分の経験やスキルを生かしたうえで、より専門性の高い仕事に従事したり、自分では不可能と思われることにチャレンジしたりすることもできます。もちろん、収入面からどちらがよいかを熟考する必要はありますが、第一線で働き続けたい・社会に貢献したいという思いが強いのであれば、何のしがらみもない世界に飛び出してみるのもよいのではないかと私は思います。社会全体から見たら、さまざまな経験を積んだシニアが同じ企業内に留まるよりも、あらゆる場所で広く活躍することに価値があるかもしれません。