新卒採用は “人事戦略”の大きな課題になっていく
これから本格化する24卒の採用に向けて、人事部門や採用担当者はどのような点に留意したらよいのだろうか。
高村 そもそも、学生のWEB(プレ)エントリー数は増えたとはいえ、40社程度です。その中に入らないと、学生は説明会にも参加しません。さらに、受験した企業数は23卒で平均15.2社です。まず、40社に入り、次の段階で15社に入らなければなりません。大手企業といえども、油断はできないでしょう。企業が抱える採用活動の悩みについて、従業員501名以上の企業では「内定の歩留まりが読みにくい」が1位。それに続くのが、「学生の意識・ホンネが読めない」と「応募母集団の形成がうまくいかない」です。特に、「応募母集団の形成がうまくいかない」は22卒から大幅に増加していて、「本選考まで学生がなかなか来てくれない」という声が大手企業でも多く聞かれるようになっています。企業規模や業種にかかわらず、採用競争は激しさを増しているようです。
高村 こうなると、大手企業は人事部レベルの話ではなく経営戦略の課題になってきます。最近、CHRO(Chief Human Resource Officer=最高人事責任者)を設けたり、ジョブ型採用の枠を設ける企業が増えているのはその表れでしょう。また、在籍中の社員のスキルアップをはじめ、「人的資本経営」の議論も活発になってきています。そうした全体的な戦略の中で新卒の採用活動を位置づける必要があります。
一方、中小企業が、“応募母集団をつくること”に苦労している状況は以前と変わっていません。とにかく、学生と接触する機会をつくることが大切なので、ナビサイトへのプレエントリー促進やイベント開催だけではなく、23卒の内定者や若手社員を巻き込んで24卒向けのインターンシップ類や会社説明会参加の紹介者枠を付与するといった“リファラル採用”の手段を使ってみてはどうでしょう。
また、就活の早期化がありながら、学生の中には、コロナ禍で適切な情報を得られずに出遅れる層も存在します。そうした学生に対して、「当社は通年採用で、まだまだ採用活動を続けています」などとアピールするのも有効的です。