大切なのは就活生にとっての「就活エンゲージメント」

 ここで注目されるのが新しいインターンシップ制度だ。経団連と大学のトップが直接対話する“採用と大学教育の未来に関する産学協議会”が今年2022年6月に「2021年度報告書/産学協働による自律的なキャリア形成の推進」を発表した。それによると、25卒の採用活動から、インターンシップ類は4つの類型に整理される。

高村 新たな制度で「インターンシップ」という名称を使えるのは、学生を職場に5日以上受け入れて就業体験させ、なおかつフィードバックを行うプログラムに限られます。当面、これを実施する企業は大手に限られそうです。ただ、大手企業にしても、その条件をクリアするのはハードルが高く、相応の人員と時間を投入していく必要があります。

高村 最近の学生は、インターンシップ類であれ何であれ、企業と接触した際に、「あなたは○○がちょっと足りないけど、□□をもう少し頑張ればいいんじゃないかな」といったようなフィードバックを受けると、そのアドバイスをくれた企業や担当者に好印象を持ちます。

 たとえば、会社説明会でも、自社の説明だけを行うのではなく、業界動向など、学生の就職活動全般に役立つことを伝えてみてはどうでしょう。そうした姿勢が学生の間で評判になれば、より多くの学生が集まるかもしれません。就活における“気づき”や自分の弱みを改善する“きっかけ”を与えてくれた会社に対して、学生は評価を高めます。「就活エンゲージメント」がこれからのキーワードになるでしょう。

 大手企業も中小企業も、大切なことは一人ひとりの学生にきちんと働きかけることであり、インターンシップ類のプログラムは、学生へのフィードバックを前提に組み立てていく必要があります。ただし、こうしたやり方が効果を発揮するには在籍社員の満足度の高さが必須です。若手社員が「うちの会社には入らない方がいいよ」などと学生に陰で言ってしまえば、採用担当者の努力も水の泡になります。そのためには、社内の職場環境を整え、優秀な人材を育てていくことが欠かせません。

 いまの学生たちは、長引くコロナ禍によって“安定志向”が強くなっていますが、それと同時に、ひとつの会社で定年まで働くという意識は薄れてきています。さまざまな思考や価値観を持つ学生がいるという理解のうえ、自社らしい採用活動を工夫していくことをお勧めします。

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