民主労総は、一般の国民の福祉よりも、政治闘争に明け暮れる団体である。今回の一連のストは尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権に対抗することも目的の一つであった。尹錫悦政権が、文在寅(ムン・ジェイン)前政権時代に傲慢(ごうまん)になった民主労総の過剰な要求に屈すれば、今後の経済活動への悪例となったであろう。
法と原則を守る姿勢で
貨物連帯の要求を拒否
韓国政府は、交渉というより政府の方針を押し付けるような対決姿勢で臨んだ。
韓悳洙(ハン・ドクス)首相は「違法な輸送拒否や輸送妨害行為には一切寛容な態度は取らず、あらゆる措置を講じて厳正に対処する」と発言。
尹錫悦大統領は、「無期限な輸送拒否を持続すれば、政府が業務開始命令を含むさまざまな対策を検討するしかない」と警告した。さらに「地域別輸送拒否、運送妨害など全ての違法行為に対しては、法と原則に従って厳重に対応する」と述べた。
11月29日、セメント分野の輸送拒否者に対し、(労働者に業務復帰を強制できる)業務開始命令を出し、「復帰義務を履行しない場合、法と原則に基づき厳正に対応する」と警告した。その場合、運行停止や資格停止に加えて3年以下の懲役または3000万ウォン(約310万円)以下の罰金が科される可能性があった。命令を受け、運転手らは業務に復帰。セメントの出荷量は12月7日には通常の90%にまで回復した。
鉄鋼分野での出荷量が50%の水準となり、またガソリンスタンドでも品切れが相次いだため、8日には、鉄鋼や石油化学分野に対しても業務開始命令が出された。
国民は政権の対応を支持し
民主労総には大きな痛手に
こうした中、「世論調査公正」が5~6日に行った調査で尹錫悦大統領の支持率は41.5%と7月以来5カ月ぶりに40%以上となった。直前の調査と比べ9.1ポイントの大幅上昇である。調査会社では「貨物連帯のストなどに対して法と原則による対応を貫いたのが主な要因」と分析している。他社の調査でも尹錫悦大統領への支持率は上昇した。
貨物連帯がストを撤回したのは、政府の強硬姿勢に加え、世論の変化にも直面したことが原因である。