洋上風力クライシス#5Photo:SENEZ/gettyimages

「洋上風力クライシス」が直撃しているのは三菱商事だけではない。政府公募の洋上風力発電プロジェクトコンペ第2ラウンドを勝ち抜いたENEOSホールディングス、JERA、三井物産、住友商事もしかり。いずれの事業者も、すでに採算が厳しいと悲鳴を上げているのだ。そもそも洋上風力クライシスを招いた真犯人とはいったい。特集『洋上風力クライシス』(全6回)の#5では、第1ラウンドから第3ラウンドまでの経緯をエネルギー業界関係者への取材を基に徹底検証し、真犯人をあぶり出す。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

脱炭素の「切り札」洋上風力への期待
関係者「早晩行き詰まると思っていた」

 2024年9月26日に開かれた洋上風力に関する政府の審議会で示された資料には、政府公募の洋上風力発電プロジェクトコンペ「第2ラウンド」参加者の“悲鳴”が続々と寄せられていた。しかも第2ラウンドの勝者からは「このままでは事業撤退をする事業者もないとは限らない」という言葉まで飛び出した。

 脱炭素の切り札として、政府が期待を寄せてきた洋上風力発電が危機的状況を迎えている。圧倒的な価格破壊で第1ラウンドを総取りした三菱商事は円安、資材高、工程遅延の「三重苦」に加えて誤算に誤算が重なり、巨額損失の瀬戸際に立たされている(本特集#1『三菱商事が洋上風力事業で「巨額減損」の瀬戸際、商社No.1の座危うし!コンペ第1弾で3案件を総取りも「3つの誤算」で窮地に』参照)。第2ラウンドの勝者も本格的に事業を開始してからわずか1年余りで、「採算が厳しい」と悲鳴を上げている。

 洋上風力発電プロジェクトに詳しいエネルギー業界関係者は「日本の洋上風力が早晩行き詰まるのは、目に見えていた」と指摘する。

「洋上風力クライシス」を招いたのは、一義的には背負い切れないほどのリスクを取って、洋上風力発電プロジェクトに参入した三菱商事をはじめとする事業者といえる。しかし、必ずしも事業者だけに責任があるとは言い切れない。前出のエネルギー業界関係者は「責任を取らなければならない真犯人は別にいる」と指摘する。

 洋上風力クライシスを招いた真犯人とは――。次ページでは、洋上風力クライシスを招いた真犯人の正体を解き明かす。