YouTubeなどの動画配信者や、「ミラーレス一眼を買ってみたい、写真だけでなく動画も撮りたい」という若い世代に今人気の「VLOGCAM ZV-E10」というカメラがある。通称“もふもふカメラ”。テレビの音声さんが持っているマイクのような、ふわふわとした毛が上部に付いているのだ。カメラに詳しい人はノーマーク、動画を撮りたい人には大人気というこのカメラはなぜ生まれ、ヒットしたのか?ZV-E10を中心に、ソニーのVLOGCAM戦略に迫る。(フリーライター 荻窪 圭)
2010年以降、どんどん
デジタルカメラが売れなくなっている
デジタルカメラ市場の落ち方が、すさまじい。
かつて写真を撮る機械といえば「カメラ」だった。フィルム代や現像・プリントにコストがかかるフィルムカメラから、ランニングコストがほとんどかからないデジタルカメラに市場が移り、写真の閲覧や共有環境がプリントから画面・インターネットへと急激に変化していくに伴って、人々が撮影する写真の枚数やインターネットを通して公開される写真は飛躍的に増え続けている。
にもかかわらず、カメラ市場は2010年をピークに急激にシュリンクしている。理由はいうまでもない。人々が撮影・閲覧・共有するためのデバイスが「カメラ」から「スマートフォン」へ移行したからだ。
かくしてカメラ市場はどんどん小さくなり、特にコンパクトデジカメは売れなくなった。デジカメの主流は、カメラ好きやカメラを必要とする人に向けた、高性能で高価なデジタル一眼のハイエンドモデルが主流になったのだ。
しかし、ハイエンドばかりではユーザー層が広がらない。新規ユーザーをどう獲得していくかは、各社とも頭を悩ませているところだ。
デジカメが売れない。新規ユーザー、若者が買ってくれない……市場全体がそう悩んでいたところに、新しいアプローチで新規ユーザー層を開拓し、ヒットに結び付けたのがソニーである。「VLOGCAM」という新シリーズだ。