まるでこたつソックスPhoto:DIAMOND

「靴下の岡本」が販売している「まるでこたつソックス」をご存じだろうか。その名の通り「冷え解消」の効果があり、履くと足が温まるアイテムだ。そして何を隠そう、2015~20年の6年間で「累計70万足」を売り上げた大ヒット商品である。その後も好調が続いており、岡本は製造ラインへの設備投資を加速させている。1足1800円と高価にもかかわらず、暖冬の時期でも売れ続ける理由は何なのか。背景にある“2つの要因”に迫る。(フリーライター 鬼頭勇大)

暖冬にも負けず
「まるでこたつソックス」が大ヒット

 靴下メーカー・岡本が販売している「まるでこたつソックス」が絶好調だ。もともとは別の商品名で2013年から販売していたが、15年のリニューアルを機に人気が爆発。翌16年には、13年と比較して「17倍以上」(数量ベース)の売り上げを記録した。

 さらに、15~20年の6年間では累計70万足が売れた。以降の実績は開示されていないが、新型コロナウイルス感染拡大後もハイペースで売れ続け、21~22年シーズンは在庫が完売した。

 今冬(23~24年シーズン)は例年より暖冬だとみられるが、前年以上の売れ行きを見せているという。本稿では、そんな「まるでこたつソックス」が大ヒットした裏事情に迫る。

「まるでこたつソックス」の前身となる商品は、前述の通り13年に発売した。だが実は、企画・開発はその5年前からスタートしていた。21年から「靴下サプリ」(※)のブランドマネージャーを務める青柳一輝氏は、5年という期間を「(岡本の製品で)最長クラス」だと語る。

※刷新後の「まるでこたつソックス」を含む、岡本の商品ブランド

 時間を要した理由は、単なる「温かいアパレル」として売り出すのではなく、顧客の「冷え解消」をとことん追求していたからだ。青柳氏は次のように続ける。

「商品開発に向けて調査した結果、年齢を問わずに冷えに悩んでいる人が多いことが分かりました。加えて、対策としてカイロや靴下などを使っている人も多いものの、なかなか冷えの解消に至っていないことも見えてきたんです」

 足の冷えを解消するための方法は、磁力を使うなどたくさんある。その中で、どうすれば効果的に温められるのか――。外部の研究者などと話し合いを重ねた結果、岡本では「特定のツボを温熱によって刺激することが効果的ではないか」という結論に至った。

【次ページ以降】
・「靴下の岡本」が見出した体が温まるツボ
・「不遇の時代」の意外な商品名
・自社の懐も温かい!?岡本の絶好調決算
・「まるでこたつソックス」の牙城を脅かすライバル