「子どもは成人と比べて体内の熱の放散もうまくできません。寝姿勢を変えることで深部体温の調節を行うため、寝返りが増えます。さらに、脳が十分に発達していないので、コントロールができず大きな寝返りを打ってしまうのです。子どもの寝相が悪いのは、ある意味当然と言えます」

 思春期までは、寝相が悪くてもさほど問題視しなくて構わない。だが、成人してからも寝相が悪い場合は、注意が必要だ。

「成人の寝相の悪さの原因として考えられる要素は3点あります。(1)睡眠環境の悪さ、(2)体の病気、(3)睡眠の病気――です」

 一つ目の「睡眠環境の悪さ」から、確認していこう。

「部屋の室温や湿度が快適ではない、枕やマットレスといった寝具が体に合っていないなど、環境が悪いと寝苦しさにつながります。寝づらさから、無意識に何度も寝姿勢を変えるようになるので、寝相も悪くなってしまうのです」

 そのほかに、音や光が安眠を妨害することもある。リラックスして寝られる環境を整えることで、寝相が改善する人も多いそうだ。

「二つ目の『身体の病気』は、痛みやかゆみが症状として現れる病気が原因です。たとえば、腰痛症、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、皮膚掻痒(そうよう)症などが代表例として挙げられます。痛みやかゆみを和らげたいがために、体の向きを頻繁に変える結果、寝返りが増え、ダイナミックになるのです」

「睡眠の病気」かどうかを
見分けるポイントとは

 寝相を悪くさせる原因の三つ目は、「睡眠の病気」だ。

「疑われる病気はいくつかありますが、どの病気も共通して『気づかないうちに覚醒状態になっている』ケースがほとんどです。この状態は『微小覚醒』といって、目は開いていないし本人も自覚はないけれど、脳は覚醒しているという状態を指します。脳が休まらないので、なかなか疲れがとれません」

 昨今、“睡眠の質”に注目が集まっているが、微小覚醒は睡眠の質を下げてしまう。

「無意識にでも睡眠の途中で覚醒し、睡眠の分断化が起きると、熟睡感が減ります。本来、レム睡眠時は体が動かないように筋肉が緩んでいるのですが、『睡眠の病気』が疑われる人の中には、なんらかの理由で筋肉の緊張を下げる神経の調節がうまく働かない場合があります。そのため、レム睡眠時でも動けるようになってしまうのです。これだと『睡眠の質が良い』とは言えません」

 では、寝相の悪さが症状として現れる「睡眠の病気」とは。