学校在学が条件となっているまちも多いですが、明石市はシンプルに「18才まで」としています。中卒の方や高校を中退して無職になっている方の場合、支援の必要性がより高いからです。行政目線で、対象者の把握のしやすさを優先するのではなく、必要な支援が必要なときに届く制度にして運用する。当然、目線は市民の側です。自己負担はゼロ。もちろん所得制限などありません。

「保育料」も明石市では2016年から所得制限なしで、第2子以降を完全無料化しています。兄弟の年齢関係なし、市外の施設でも無料です。

 国は2019年に幼児教育・保育の無償化を始めましたが、利用する施設や年齢で上限が設けられ、所得制限もあります。新たに3~5才の副食費(おかず代)も保護者負担になりました。子どもを親の所得で分けずに「すべての子ども」を対象にする明石市とは、そもそもの発想が違いますが、要件を変えればいいのです。国でも完全無料化は可能です。

 明石市は先行して、市の自腹で保育料を無償化していたので、国の無償化で実質4億円ほど補填されることになりました。その浮いたお金で翌年すぐに始めたのが、「中学校給食」の無料化です。もちろん所得制限はありません。近年のコロナ禍、食料品などの値上がりで、家計負担がキツくなる中、学校給食の無料化も次第に広がりつつあります。

 さまざまな機会を通じて国への働きかけをしてきましたが、今後も国や県が追いついてくれば、市独自の負担が減り、明石はもっと先に行けます。

 子育てサービスの無料化は、どこの自治体でもできることです。明石だけが特別だとか、市長が変わり者だからできるという話ではありません。どこの市長であれ、可能なのです。

 ただ、個々の自治体が単独で実施するのがいいのかは、おおいに疑問です。ベーシックな子育て支援は国がしてこそ、「すべての子ども」が救われると思っています。

最大のポイントは「所得制限なし」。
見るべきは、親でなく子ども自身

 無料化に関連して、「なぜ所得制限を設けないのか」とよく聞かれます。

「年収○万円以上だと児童手当がもらえない」。なぜ国はあんなにセコいのか。

 所得制限をかければ、予算の0の桁を1つくらい減らせるから、そして、少ない費用で「やってるフリ」ができるからです。

 そもそも、なぜ親の所得で分けようとするのか。見るべきは親の所得でなく子ども自身です。もし所得を見るなら親でなく、子ども自身の所得。根本の発想から変えていかなければなりません。