明石市の5つの無料化は「所得制限なし」。対象は「すべての子ども」です。それにはいくつもの理由があります。

 まず、所得制限で対象外とされる方々は、すでに多額の税金や保険料を納めているからです。

 行政サービスには財源が必要です。そのための利用料を市民は税金として「前払い」「支払済み」です。だからこそ、国や行政が「一定以上の所得がある」だけでサービスの対象外とするのは、納得しにくいことでしょう。

 一定以上の所得がある方から預けていただいた税金を一部の低所得の方だけに配ることは、社会に深刻な分断を招きます。

「あんたは金もらったやろ」「私はもらってない」。

 個々の不満は、「もっと所得制限を厳しくしろ」。ついには「こんな施策やめてしまえ」という大きなうねりになりかねません。

「みんな」に必要な施策、それが子ども施策です。

 いわゆる「中間層」には、子育て支援など必要ないと言う人もいます。でも今の日本は、中間層とて楽ではない社会です。消費税も介護保険料も制度開始から上昇し続け、国民負担率は増加の一途。それに見合うほど給与は上がらず、社会的な負担も重くなるばかりです。

 ましてや子どもを産み育てることには、服に食事に病院にも学校にも費用がかかる。お金も不安も大きな負担です。しっかり税金を預けているにもかかわらず、何の恩恵もない。子どもを産みたくてもためらってしまう。そんな所得制限のあるまちに、誰が住み続けたいと思うでしょうか。中間層がいなくなれば、まちにも行政にもお金は回りません。支援制度の維持すら難しくなります。

「所得制限なし」は、
今の日本に必要な「経済施策」

 所得制限をかけず、苦しんでいる中間層にも光を当てる。そうすれば家を建てたり、子どもを習いごとに通わせることもできる。そうしてこそお金が回り、持続可能なまちづくりにつながります。

「所得制限なし」は、今の日本に必要な「経済施策」でもあるのです。

 一方で「これ以上稼いだら給付の対象外になる、ほどほどにしとこ」と、やる気すら削がれる「130万円の壁」が立ちはだかります。扶養控除の対象から外れないためにパートの給料を月10万円で抑えようとさせ、人ががんばれないように追い込むなんて、理不尽なことを強いる政治は愚かです。支え手を減らすような発想を転換しなければなりません。