経営層との対話を重ね、デザインへの信頼感を高めていく

――デザインセンターが経営戦略まで広く関わるようになった経緯をお聞かせください。

 2016年に当時社長だった山名(編集部注:現会長・山名昌衛氏)から直接「会社をクリエイティブにしたい」という思いを託されました。これを私は、社内風土も、社員の考え方も、意思決定の仕組みも人間中心に変革していこうという決意と捉え、自分自身に課せられたミッションとして「デザイン思考」の全社教育に取り組むようになりました。

 当時のコニカミノルタは「モノ売りからコト売りへ」の大変革の渦中です。開発のアプローチでも「BtoBtoPforP」という表現を使い始めていました。最初のPは「Professionals」、次のPは「People」を指します。BtoB企業だけれど、あくまで顧客企業の中で活躍する一人一人のビジネスパーソンや、その先のエンドユーザーといった「人間」を中心に据えて価値を共創しよう――。そんな姿勢を示したものです。これを実践するには、社員全員にデザイン思考のマインドセットが必要です。

――経営トップからダイレクトに経営への参画を要請されたのですね。

 実はその前段階があります。私から山名に「時代は変わる。これからはデザインがもっと重要になる」と直接訴えたのです。デザインセンターはもともと研究開発部門の中にありました。私は、デザインの力でもっと大きな価値が創造できると確信していたのですが、当時のままの組織体制では全社戦略に関わるのは難しい。そこで、社長直轄組織として独立することを提案したのです。

 山名自身、既に海外でデザイン思考が根付いていることを肌で感じていたそうで、社長直下の新組織としてデザインセンターを再編成することがその場で決まりました。以降、経営戦略部門とのコミュニケーションが一気に増え、事業戦略にも広く関わるようになったのです。

――経営層との対話によって、デザインの重要性がしっかり確認されたことが起点になっている、と。

 ただし、ビジネス環境や経営状況が悪化すれば、売り上げや利益といった短期的な数値に志向が向かうようになり、数値で語ることが難しいデザインへの期待度は、下がる方向に力が働きがちになることがあります。ですので、長期的な意義を伝え続けなくてはいけません。先日も社内発表会で、パートナー企業と共に価値共創に取り組んだ事例を経営層にプレゼンしました。カルチャーの異なる企業同士が、いかに共通のビジョンを形成し、双方の強みを生かして社会課題を解決できるか。こうしたビジネスストーリーを描くプロセスを丁寧に説明したところ、非常に強い共感が得られました。今後も地道な対話を積み重ねていきたいと思っています。