対話を重ね、人間中心の価値創造を社内に根付かせるGraphs / PIXTA

ビジネスにおける「デザイン」の役割が拡張し続ける中、企業内のデザイン組織はどのように変化しているのだろうか。本連載では、先駆的にデザイン経営に取り組む企業の実例を通じて、業務範囲の広がり、経営層や現場との関係づくり、人材育成といった視点から、その動きを探っていく。第1回では「美しき解。」というデザインフィロソフィーを掲げ、全社変革を大きく推進したコニカミノルタデザインセンター長の平賀明子氏に、社内デザイナーが果たす役割を聞く。(聞き手/音なぎ省一郎、坂田征彦、構成/フリーライター 小林直美)

ビジネス開発の初期からデザインセンターが参画する

――コニカミノルタではデザインセンターが、製品・サービス開発のかなり上流から関わっているのでしょうか。

 事業特性によってさまざまなパターンがありますが、新規ビジネスの場合はだいたい初期から関わります。サービス像がはっきりしない段階から参加して顧客やパートナー探しからスタートすることもあれば、もっと上流の技術開発から関わることもあります。一方、ハードウエアのスタイリングや、画面上のアピアランスデザイン主体というケースもあります。

――新規ビジネス開発に初期から関わった具体例を教えてください。

 例えば、コニカミノルタが長年磨き上げてきた画像技術にAI、IoT技術を組み合わせて立ち上げたプラットフォームビジネス「FORXAI(フォーサイ)」では、技術部門と共に、強みとなる技術を生かした事業のアウトラインを創る段階から参画していきました。

 事業構想が見えてきた後は、技術系やビジネス系など多様なメンバーが参加するワークショップをデザインセンターがファシリテートし、「この事業を通じて社会にどんな価値を提供するのか」を掘り下げました。この過程で事業ビジョンが具体化し、「FORXAI」というネーミングも生まれています。

――デザインセンターが、事業構想やビジョン開発まで担うのですね。

 もちろん、投資計画や協業体制の構築など「ビジネスの枠組み」の主体は事業部門であり、それらの意思決定はトップマネジメントが行いますが、「誰に、どんな価値を提供するか」という顧客価値の具体化の部分でデザインが深く関わります。つまり、事業構想の中でも特に顧客起点に関わる部分をデザイン主導で担うイメージです。

――こうした参画の在り方は、既に社内では当たり前になっているのでしょうか。

 そうですね。全社の長期ビジョン開発もデザインセンターがファシリテートしましたし、それ以前からデザイン思考の社内教育を進めてきました。「何もないところから意味を見いだしていく」ことや、「バラバラな問題を、意味ある一つのまとまりに形成していく」といったデザインの役割は、社内でかなり広く認識されていると思います。