「両利きのキャリア」は、特にミドル世代にとって大切

 この「両利きのキャリア」形成は、特に、30代40代のミドル世代に必要であると、私は考えています。

 企業(組織)には4つの成長ステージ(試行期・拡大期・多角期・再生期)があると言われていますが、働く個人のライフキャリアにおいてもこの4つのステージがあるとすると、大学卒業後、与えられた役割や目の前の業務に精一杯向き合う「試行期」、ある程度のビジネススキルやスタンスを身につけて自身の役割や仕事の幅を広げていく「拡大期」を経て、これまで培ったスキルや経験・知識を「深化」させるとともに、新たなスキルやステージの「探索」に向けた「多角期」「再生期」を迎えているのがミドル世代であると捉えることができます。30代40代は、時代とともに変わっていく自身の市場価値を適切に見定め、自身の目指す姿や実現したい将来のビジョンに対して、いま一度、冷静かつ情熱を持って考え直す大切な時期と言えるでしょう。

 現在、私は、成熟企業の事業創造支援を行う企業で、広報やマーケティングを行っていますが、自分自身のキャリアを振り返ると、猪突猛進でがむしゃらに働いた新人時代(試行期)と、上司や仲間とともに新しい会社の事業・組織創りに奔走し、自分の幅を広げた拡大期がありました。そして、30代前半から中盤にかけては、結婚・海外移住・出産というライフイベントが一気に押し寄せ、自分の目指す先や実現したい未来が見えない状況になりました。そんな暗黒期のなかで、過去の延長線上ではないスキルや経験の獲得に向けた「探索」行動に励みました。