人生100年時代を拓く「両利きのキャリア」とは?
まず初めに、「両利きのキャリア」について、皆さんと認識を揃えておきたいと思います。本稿での「両利きのキャリア」の形成とは、本業と副業・兼業といった二足の草鞋を示すのではなく、個人のキャリアにおいて、
(1)自分自身が過去から培ってきた知識や経験、スキルを活用する「深化」行動
(2)仕事や私生活における新たな機会や経験・スキル獲得を模索する「探索」行動
のふたつを共存させ、より豊かな人生を築いていくことを指します。
日本の社会は、企業・団体の躍進による高度成長期、バブル期などを経て、平成から令和の現在は、組織内の「個人」の能力や成果がより問われる時代になっています。また、年功序列や終身雇用といった雇用形態の見直しやAI・ロボットの活用による業務の自動化などで人材雇用の多様化が進み、そうした環境下で、個々人が自立・自律的にキャリアを形成していくことが求められるようになっています。
昨今、リスキリングやリカレント教育、アンラーンといった「学び直し」が話題になっているのもこういった時代背景があるからでしょう。経済産業省が2022年5月に発表した「未来人材ビジョン」には、これからの時代に求められる人材には、「注意深さや責任感、真面目さ」といったもの以上に「問題発見力や革新性」が必要となると明記されています。この「問題発見力や革新性」は自立・自律的なキャリア形成から生み出されるものだと、私は思います。
また、産業のソフト化や商品・サービスの短サイクル化によって、私たちは、一度身につけたスキルや知識がすぐに陳腐化してしまう厳しい現実にも直面することになるでしょう。幸か不幸か、「人生100年時代」と言われる今の時代を生きる私たちに必要なことは、世の中の変化や流れに合わせて、柔軟に適応していくマインドや行動力です。そして、その際に有用なのが「両利きのキャリア」だと、私は考えます。日本人が得意としてきた磨き込みや改善・改良という、「これまでの知識や経験を深掘りする能力」に加え、新しい知識やスキルを模索し、身につけるような「新たな機会を探索する能力」を鍛えることで、個人としての市場価値や魅力を高め、彩(いろどり)ある豊かなライフキャリアを歩めるようになるのではないでしょうか。