経営者・人事担当者に望まれる“ファーストペンギン”
では、企業のこれからを担う30代40代のミドル世代が「探索」行動を行いながら、個々人の能力をいかんなく発揮するために、企業の経営層や人事部門がするべきことは何でしょうか。それは、経営層や人事部門の方々自身が“両利きのキャリアのファーストペンギン(実践者)になる”ことでしょう。
先日、弊社が、ある企業の経営幹部層に対して行ったワークショップで印象的なシーンがありました。冒頭、ファシリテーターが「最近、皆さんはどんな経営(事業)改善をされましたか?」「最近、皆さんはどんな新しいサービスに触れましたか?」というふたつの質問を、出席者である経営幹部層に投げかけました。前者の問いに対しては、大半の方から手が挙がり、大小さまざまなトライ&エラーが共有されたのに対し、後者の問いに対しては、挙手もまばらで、回答がほとんどありませんでした。ただ、後日、このワークショップに参加くださった方から「社員に新規事業開発と言っている自分自身が新しいものにいちばん触れることをしていなかったと気づき、週末に新しいサービスを体験しに行ってきました」といったご報告や「まずは、身近な“ゴルフのアプリ”をスマホに入れて使ってみることにしました」というご連絡をいただきました。これらも歴とした「探索」行動です。「探索」というと、何か意気込んで「大きなことをやらなければ!」と構えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、この方々のように、まずは、身近なことや興味のあることに向き合ってみるフットワークの軽さが大切です。こういった経営幹部層の姿勢に、社員が、「両利きのキャリア」の実践を感じ、自分たちも倣ってみようという気持ちやアクションが引き出されるのだと思います。
また、以前、製薬メーカーの研究職の方々を対象にしたキャリア研修を企画・運営された人事ご担当者の方は、約4カ月間のプログラムを通じた“参加者の挑戦や行動変化”を目の当たりにし、「人事部の自分が、挑戦をいちばんしていなかった」と気づき、キャリアコンサルタントの養成講座に通うことを決意されました。まさに、「探索」行動です。その後、見事に資格を取得され、「探索」で得た知識や経験を生かしながら、現在は、同社が掲げる「未来創造企業」に向けた「全員挑戦者集団」を創るというビジョンに向けて、人事制度の構築や人材育成に精力的に取り組まれています。
これらの例からわかるように、経営層や人事担当者自らが、キャリアの「深化」と「探索」を行うことが、社員のアクションを誘発し、組織の新たな能力や変化・挑戦に前向きな社内風土が形成されていくのです。
2023年、皆さんが取り組んでみたい「探索」は何ですか?
ファーストペンギン(実践者)として、「深化」と「探索」から生まれる「両利きのキャリア」を悠遊(のびのび)と一緒に楽しんでいきましょう!