たばこの臭いはビジネスの世界でも不利
産業医科大学産業生態科学研究所の大和浩教授は、ヘビースモーカーがもたらす企業リスクについて、このように話した。
「それはビジネス機会の損失です。具体的には、喫煙者の従業員が吐く息や、衣類から発するたばこのニオイや化学物資(残留たばこ成分)によって、取引先や顧客が不快になったり健康被害を引き起こしたりして、商談がうまくいかなくなって最悪、取引が終了してしまうというリスクです」
昨年11月、内閣府が、18歳以上の8割を超える人がたばこの煙を不快に感じているという調査を公表した。実はかねてからビジネスの世界では、「たばこ臭い息でモノが売れない」「たばこ臭い職場には人材が集まらない」という問題が指摘されていた。
健康支援サービスを提供するティーぺックが17年におこなった「喫煙に関する意識調査」では、1500人を対象に、商品を購入またはサービスを受ける際に、提供者からたばこのニオイなどを感じたかと質問したところ、約6割の889人が「感じた」と回答している。さらに、その中の55.9%が「購買意欲が下がった」と回答をしている。
ビジネスパーソンの方ならば、このような経験は一度や二度はあるはずだ。大事な商談やプレゼンで、先方が熱弁を振るっているのだが、その息がたばこ臭くて内容がほとんど頭に入らないというケースもよくある。たばこのニオイをかぐと気分が悪くなるなんて人からすれば、一刻も早くこの場から逃げ出したいので、商談どころではないのだ。
また、総合求人サイト「イーアイデム」を運営するアイデムが全国の男女331人を対象に昨年9月に調査をしたところ、求人に掲載されている就業場所が「敷地内全面禁煙」だと8割超が「応募する」と回答した。一方、「喫煙可」にすると「応募する」と回答した人が半数以下に留まったという。さらに、非喫煙者の場合、3割程度しかいなかった。つまり、「働きたいけれどたばこ臭い職場だけは嫌だ」という人がかなりいるということだ。