東京電力ホールディングスと中部電力の合弁会社で、両社の燃料調達・火力発電を担う「JERA(ジェラ)」は次期社長に中部電出身の奥田久栄副社長を昇格させる方針を固めた。同社設立以来、3代続けて中部電出身者がその座を担うことになる。電力業界で急成長を遂げるJERAの次期トップの人選はギリギリまで難航し“複雑”な形で着地した。社長レースの舞台裏をいち早く解き明かす。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
「JERAの将来と適材適所を重視」
順当だけど“複雑”な人事
「会社の将来を考えた適材適所の順当な人事ですけど、なかなか正確に予想できる人はいないと思いますよ」
かねてから会社関係者が匂わせていた通り、同社のトップ人事はなかなか“複雑”な形で着地する見通しとなった。
燃料調達・火力発電会社「JERA(ジェラ)」は次期社長に、中部電出身の奥田久栄副社長(57歳)を昇格させる。奥田副社長が社長兼CEO(最高経営責任者)に、東京電力ホールディングス(HD)出身の可児行夫副社長(59歳)は会長兼グローバルCEOに昇格する。22日午後に発表する。
JERAは東電HDの完全子会社である東京電力フュエル&パワーと中部電が50%ずつ出資している非上場企業だ。
液化天然ガス(LNG)の取扱量は世界最大級であり、トレーディングを中心に急成長している。日本最大の発電会社でもある。2023年3月期第3四半期の総資産は約10兆円で、業界トップの東電HDに肉薄する規模にまで急成長。巨大企業を率いる次期社長レースの行方に注目が集まっていた。
15年に発足したJERAの社長は2代続けて中部電出身者が押さえてきた。初代社長で前社長の垣見祐二氏は、JERAが東電HD・中部電の火力発電資産を承継したタイミングの19年、現社長の小野田聡氏(67歳)にバトンタッチしている。
新しい会社故に慣例は無きに等しいかと思われたが、そこは保守的な電力業界の一社。4年という社長交代の前例を守り、今春バトンタッチと相成った。
次期社長候補は早くから奥田、可児の両氏に絞られていたが、ぎりぎりまで最後の人選は難航した。次ページでは、“複雑”と形容するに至ったトップ人事の舞台裏に迫る。