電力バトルロイヤル#2Photo:JIJI

東京電力エナジーパートナー(EP)完全子会社の新電力、テプコカスタマーサービス(TCS)が、今春から東電EPの取次会社になることがダイヤモンド編集部の入手した内部資料で分かった。自前での電力仕入れや販売から撤退する。かつて関西を中心に安値攻勢を仕掛け、新電力首位に立ったこともあるTCSの販売量は、足元では減少の一途をたどっていた。特集『電力バトルロイヤル』(全6回)の#2では、新局面に入ったTCSの撤退戦をレポートするとともに、TCSを取次会社にする東電グループの意図を明かす。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

「自力販売」撤退の伏線は2022年10月末
電力売買の日本卸電力取引所を「ひそかに脱退」

 東京電力エナジーパートナー(EP)完全子会社の大手新電力、テプコカスタマーサービス(TCS)が、4月から東電EPの取次会社になることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。既に顧客法人には周知した。

 取次は、小売電気事業者の販売を補助するのが役割。つまり自力で電力を仕入れて販売する立ち位置から、親会社である東電EPの販売を補助する立ち位置へ“格落ち”する。

 伏線となる出来事はひそかにあった。

「TCSから2022年10月末で取引会員を脱退する通知があった」。日本卸電力取引所(JEPX)は2022年9月末にホームページ上でそう発表していた。

 独自に発電施設を持たないTCSのような新電力が、市場調達にまったく頼らないということは考えにくい。TCS脱退という異変に気付いた一部の電力業界関係者はざわついた。

 東京電力ホールディングス(HD)における法人向けの小売り体制は原則として、小売り自由化前まで独占を許された地域内を東電EPが、その他の地域をTCSがそれぞれ担ってきた。

 TCSは業界内では「大手電力10社のうち、初めて本格的に『域外』へけんかを売りに出た主体」として有名な存在だ。10年代後半には関西などで激しい安値攻勢を仕掛け、19年2月には新電力約600社(当時)のうち販売量首位に立ったこともある。

 では、東電グループがTCSをこのタイミングで取次会社にするのはなぜか。ある業界関係者は「なんとしてもTCSの出血を止めないといけないということなのだろう」と指摘する。次ページでは、TCSを完全撤退させず、取次会社にする東電グループの意図を解説する。