回転ずしの悪質ないたずら
若者が多い理由

 さらに、皮肉なことに、この効率化で実現された低価格化によって、回転ずしは客層の変化を招き、学校帰りの生徒のたまり場になるなど「回転ずしのファミレス化現象」が見られるようになった。彼ら、彼女らは、すしを頼むのではなく、ジュースやデザートメニューをボックス型の“個室化”した回転ずしの客席で楽しんでいる。これが、今回のトラブルの遠因になったとも言えるのだ。

 回転ずしでの「テロ行為」として報じられた、代表的なものをいくつか挙げてみる。

○他のお客が注文したすしに、レーン移動中にわさびを乗せる
○他のお客が注文したすしの1貫を、レーン移動中箸で取って食べる
○しょうゆボトルや湯飲みを、舐めまわして戻す
○唾をつけた指を、レーン上のすしにこすり付ける
○共用ガリに、電子たばこの吸い殻を混入
○消毒用のアルコールスプレーを、レーン上のすしに噴射する

 回転ずし以外にも、うどん店の卓上にある天かすを共用スプーンで食べる、牛丼店で卓上にある紅ショウガをじかに食べる“じか食い”をする、焼き肉店で卓上にあるつまようじを使用してそれを元に戻す、といった行為を映した動画も拡散された。

 こうした「テロ行為」を実行した者の多くは、中学・高校生などの若者だ。仲間内で目立ちたいという承認欲求から、衝動的に行ったのだろう。しかし、あまりにも安易すぎる行動であった。過去には、2013年に話題になった、自ら犯罪自慢をSNSに投稿する「バカッター」、19年に話題になった「バイトテロ」など、これまでも若者による反社会的行動や迷惑行為は繰り返されてきている。

 現在、中学校や高校では、リテラシー教育の一環で必ずSNSの使い方やマナーを指導しているというが、これは若さゆえ、想像力の欠如から来る過ちであり、こうした行為を完全に防ぐのは難しい。

 また、今回の騒動を起こしたような“すしテロリスト”たちはその後、SNS社会で祭り上げられることにもなっていく。卒業アルバムの写真の流出と合わせて個人が特定され、通う学校が判明するまで炎上する、というのが多く見られるパターンだ。そうしたなかには、通っていた学校を自主退学したケースもあったようだ。

 そして、たった一度の行為が「デジタルタトゥー」としてネット上に残り、拡散され続け、一生涯影響を与えることとなる。実際、今回の回転ずしの騒動をきっかけにして、数年前にカレー店で卓上に備え付けられていた福神漬けを直接食べていた動画、あるいは、回転ずしでレーンから取った商品を戻す迷惑行為を行っていた動画が、再びネット上で拡散されていた。遊び半分で行った行為も、ひとたびネットにさらされてしまえば、簡単に消すことはできない。今回の騒動は、そうした社会的問題にまでつながる事態になっているのだ。