スペシャリストを育て、サービスの価値を高める
JPデジタルには、生粋の日本郵政グループの社員とともに、スタートアップやフリーランスなど、特定の領域に強みを持つスペシャリストが集結している。「重要なのは会社の看板ではない」。飯田さんは何度もそう繰り返す。「大手に頼んでおけば安心だ」とか「これまでの関係性があるからまたお願いします」という感覚では、おそらく、もう何も変えられない。
飯田さんは、JPデジタルを、日本郵政グループのDXを成功に導く「CoE(Center of Excellence)」にしたいと言う。CoEとは、目的を達成するために優秀な人材、ノウハウなどを集約した全社横断的なチームのことだ。
「私はキャリアを通して、いわゆるジョブ型雇用の世界に身を置いてきました。重要なのは、どの組織に所属しているかではなく、何ができるかです。これまで日本郵政グループでは、ジェネラリストであることが求められてきました。それもすごく大切なことです。しかし、お客さまの期待値はどんどん上がっていきます。スペシャリストを育てることで、お客さまに提供するサービスの価値を高める。これからの組織づくりには、この視点が必要だと思うんです」(飯田さん)
一カ月で選手交代することもある
スペシャリストの育成に欠かせないものは何か。飯田さんは、ひとりひとりが着実に成功体験を積むことだという。効率よく成功体験を積むには、ポイントがある。
「人には向き・不向きがあります。向いていないことで成功体験を積むには時間がかかります。リーダーは、ひとりひとりの強みを見極め、なるべく早く良質なアウトプットが出せるよう工夫する必要があります」(飯田さん)
ここでスクラムが生きてくる。JPデジタルでは、本来の所属部署や役職とは別に、テーマや機能ごとにスクラムを編成し、課題解決に取り組んでいる。対象者は、社員やパートナー企業、フリーランスも含めて100人以上。「この人はこのテーマよりこっちのほうがマッチしている」と分かれば、早くて一カ月で配置転換する。
「私が最初に『スクラムを導入しよう』と提案したときは、皆さんキョトンとしていました。これまでの日本郵政グループにはない考え方ですからね。でも、自分に向いていないことを無理やり何年も続けるより、向いていることをしたほうが早く成長できるじゃないですか」(飯田さん)
ポイントは、まずやってみる。そして、向いているのかいないのか、見極めを早くすることだ。