
コマツは4月28日、2026年3月期の純利益が前期比3割減の3090億円になる見通しであると発表した。同社は売上高の半分を占める鉱山機械を米国で製造していて、一見するとトランプ関税のダメージを緩和できるようにもみえるが、実態はどうなのか。特集『関税地獄 逆境の日本企業』の#9では、多大な影響が出かねない事情を関係者への取材で明らかにする。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)
米国での製造が多いコマツでも影響甚大
まして日本からの輸出が多い日立建機は……
コマツは4月28日に開いた決算説明会で、2026年3月期は米国のトランプ大統領の関税政策の影響で943億円のマイナスが生じると発表した。純利益は前期比3割減の3090億円と予想した。現在は5カ月分の在庫があるため、関税コストは785億円と算出したが、在庫のない状態だと1年間で1400億円に膨らむという。
トランプ大統領の施策方針は二転三転するため、業績見通しに関税の影響を織り込まない製造業も少なくない。そんな中、世界ナンバー2の建機メーカーが影響額を示したことで注目された。
この見通しを「意外」と受け止める向きも少なくなかったのは、コマツは米国では“輸出企業”の側面があるからだ。
コマツの25年3月期の売上高4兆1000億円のうち、半分近い1兆9000億円は超大型のダンプトラックなど鉱山の採掘現場で使われる機械が占めている。
そして、鉱山機械の製造は米国で行っているのだ。17年に米国の鉱山機械メーカー、ジョイ・グローバルを買収して以降は米国からの輸出超過となっている。雇用面でも、米国内で子会社と代理店で計約1万7000人を雇っている。
鉱山機械は本体と部品、いずれの利益率も一般建機を上回るため、近年はコマツの成長の柱になっている。実際に鉱山機械部門の売上高と利益率では、世界トップの建機メーカー、米キャタピラーに肩を並べるまでに至っている。
他社に先駆けてグローバル展開を進め、地域間で製品・部品を相互供給する「クロスソーシング体制」を強みとするコマツであっても、関税ショックを切り抜けられないのはなぜなのか。
次ページでは、トランプ関税がコマツを締め付ける理由と、製造拠点を米国にシフトする際にネックになる要因を明らかにする。