電機業界は、「脱・年功序列」の人事制度改革を行ったおかげで、役職定年制が不要になり、廃止した企業が多い。例えば、日立製作所は、年齢ではなく、実力によって社員の処遇を決める制度を導入した結果、ベテラン社員にとっては役職定年制より“冷徹”な評価制度が出来上がっている。特集『中高年の給料激減!主要企業のデータ初公開!大企業の5割導入 役職定年の悲哀』(全17回)の#4では、社員にとってさらに過酷な評価制度となっている東芝、NECも含め、電機業界の50代社員の人事制度の激変を具体的な金額と共に紹介する。出世の仕組みと年収が激変しているのだ。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
日立は本部長間で約500万円もの年収格差
降格もあり得る“冷徹”人事制度
バブル期に入社した40代後半から50代の人材がダブついているのは多くの日系企業に共通する課題だが、電機業界もその例に漏れない。
かつて、日立製作所にも役職定年制は存在し、50歳以上で担当者クラスや課長級程度だった社員は、グループ会社への出向(後に転籍)や、55歳程度で日立本体にいながら役職定年というパターンで、大幅な賃金カットの憂き目に遭ってきた。後者の場合、社員の年収は役職定年時に約4割ダウンすることもあったという。
だが2014年3月期の「グローバルグレーディング」導入を前に順次、役職定年制は廃止された。グローバルグレーディングは海外子会社を含む全世界の管理職5万ポジション(当時)の序列を世界統一の基準で評価し、等級分けを実施する仕組みだ。上位ポストから下位ポストに降格させれば、年齢が高いというだけで高額報酬を払い続ける必要はなくなる。
日立は人事制度改革の手を緩めなかった。23年3月期にジョブ型の人事制度を本格導入したのだ。これにより、非管理職を含む全社員のポジションごとにジョブディスクリプション(JD、職務内容を詳しく記述した文書)を作成し、JDが求める必要要件を満たす社員を適材適所で配置することになった。
これらの改革で、給料は年功序列ではなく、ポジションごとの難易度で決まる傾向が強くなった。役職定年制を復活させる必要性はもはやないというわけだ。
ただ、その結果、日立では役職定年性の時代よりもシビアな人事が多発している。実は同じ役職でも500万円の差が生まれることすらあるのだ。
同様にNECと東芝でも劇的な人事制度の変化が進む。かつての出世のメカニズムは通用せず、日立同様に格差が生まれようとしている。3社に何が起きているのか。何歳時点でどれくらいの給料が減るのかなど、具体的な内実を見ていこう。